第10話 坂城健吾 50歳の質疑応答

 そこにいた全員が拍手をした。

 50歳の彼は慣れているようだ。

 相変わらず、髪はきれいに切りそろえられている。

 服装は、アイロンのきいたシャツにスーツ。


 20歳の私が聞いた。

「ウィルスですか?」

 50歳の私はみんなと離れた場所で立っている。

 感染を気にしているのであろうか?

「そうなんだ、症状はインフルエンザのようだけどね。特効薬がなかったんだよ」

「そうなんですか・・そんなにたくさんの人が無くなったんですか」

「それだけじゃなくて・・感染しないよう、外出禁止になったりしてね」

「それほど・・深刻な事態だったんですね」


 30歳の私が聞いた。

「転職もしたんですね」

「そうだ、業績不振でね」

「じゃあ・・・I電機に就職しない方が良かったんですか?」

「それは違うね、どの会社も多かれ少なかれ危機的状況になったりしているよ」

「そうなんですか?」

「ずっと安泰な会社なんてない。終身雇用が幻想だったんだよ」



 もう一つ、10歳〜40歳の私が気になったところ。

 50歳の私は・・眼鏡をしていた。


「メガネ・・視力が悪くなったんですか?」

「そうなんだ。最初は老眼からだったんだけどね。視力がどんどん落ちたんだ」


 これは、若い私達にとっては衝撃だった。

 10代の頃は視力は2,0以上。40でも1.5はあった。

 それが、眼鏡をするとは。


「今のメガネは遠近両用だけどね、普段からしているわけじゃないんだけどね」

 それでも驚きである。

「何が原因なんですか?」

 10歳の私が聞く。

 きっと衝撃なのだろう。10歳の頃は数十キロ離れた山の葉っぱも識別できた。

「たぶん・・スマホだろうね?」

「スマホって・・?」

「携帯電話の一種だね。将来気をつけたほうがいいよ」

 若い私達にもピンとこないのだろう。


まぁ、その時になれば気づいてほしいと思う。

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