廃村 12
時は遡って、前日。
ルミ子は一人、治弔村の社の前にいた。社はすでに破壊されていた。
「壊されている。誰が、なんのために……」
想定外の状況に困惑しながらも、ルミ子は考察を続けた。
(私が壊したと見せかけるためかしら。それとも、中身を見られたくなかったのかしら)
「両方ですよ。鬼村ルミ子」
ルミ子の脳内に返事が返ってきた。ルミ子は頭の中で考えていたので、声には出していない。
「思考を読んだ? 誰、出てきなさい」
どこからともなく一人の女が姿を現した。女はルミ子より背が高く大きな山高帽をかぶっていた。
「初めまして。ルミ子さん。ここじゃ人目につきます。少し場所を変えましょう」
「はあ? 嫌よ。なにか用事があるならさっさと言いなさい」
「残念、これは強制よ」
突然、ルミ子の体の自由が奪われた。驚くのと同時にルミ子の体は宙に浮き、突風にでも吹かれたかのように村の外へ飛んでいっていしまった。
「これは、念力!?」
ルミ子はどうにか体のバランスを取り、どうにか地面に届いた足でブレーキを掛けた。視線に村は映らない。かなり遠くに飛ばされたようだ。
「あら、もう少し遠くに行ってもらおうと思っていたのに、流石といったところね」
「アンタ、何者なの? アタシにこんなことしてただじゃ済まないわよ」
女を睨みつけて凄むルミ子だったが、女は余裕そうに笑みを浮かべている。
「自己紹介が必要かしら? いいわ。教えてあげる」
女が手を挙げると、二人の男が姿を見せた。
「我々は怪廻サークル超能力四天王ゥ、俺がさっきお前を吹っ飛ばした念力の使い手ェ、『サイコキネシス大倉』だァ」
若いチンピラ風の男が名乗ると、続けて禿頭でサングラスを掛けた、大柄のSP風の男が低い声で語りだした。
「私は予知能力の使い手、『プロフェシー木本』」
「そして私は思考盗聴の力を持つ『テレパス藤原』よ。よろしくね、ルミ子さん」
「ご丁寧に自己紹介ありがとう。でも、四天王なら1人足りないんじゃない?」
ルミ子の問いにニヤつく三人。『テレパス藤原』は空を指差した。
「あと一人はずっとあなたを見ているわよ、ルミ子さん」
空を見上げると、奇妙なものが空に浮かんでいる。それは紛れもない人間だった。
「俺が四天王最強の男、浮遊能力を持つ『イカロスたかし』だ」
『イカロスたかし』はクールに呟いた。しかし、高く飛びすぎたためルミ子にも四天王にも声は届いていなかった。
「彼は我々四天王で最強の男、『イカロスたかし』よ。見ての通り空中浮遊の使い手よ」
「ちょっと高く飛び過ぎじゃない? てか、なんでたかしだけ名前なのよ」
ルミ子の問いかけを無視して『テレパス藤原』は話を続けた。
「さて、鬼村ルミ子。あなたはとても強い。きっと私達が1人で戦っても勝てないでしょう。だけど、超能力の達人四人が相手ではさすがに分が悪いんじゃないかしら」
『サイコキネシス大倉』は目を血走らせながらルミ子を睨みつけている。
「俺たちはこの村で蓄えた負念物を使って超能力を高めているんだよォ」
「負念物? こだまのことかしら? 確かアンタたちはそう読んでいたわよね」
「そうだ。私たちは教祖である黒蝶様より力を授かった最強の戦闘集団である」
「それで、社には何を祀っていたのか教えてくれないのかしら?」
「いいわ、冥土の土産に教えてあげ……」
話の途中で『サイコキネシス大倉』がルミ子に襲いかかった。難なく攻撃を躱したが、突然の開戦にルミ子に緊張が走った。
「やれやれ、面倒だけど力づくで聞かせてもらうとしますかね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます