廃村 13
「ヒャア!!」
『サイコキネシス大倉』がナイフを片手にルミ子に襲いかかる。身体能力は並なのだろう、ルミ子は容易に攻撃を躱し続けていた。しかし、念動力を警戒しているため中々反撃に移ることができなかった。
「あらあら、そんなに念動力が怖いのかしら?」
『テレパス藤原』はルミ子にダーツの矢を投げつけてきた。二本、三本と身を翻した先に『プロフェシー木本』の蹴りがルミ子の脇腹目掛けて飛んできた。とっさに腕で防いだものの、完全に虚を突かれた形になり、少なからずダメージが残った。
「お前がここに来ることは既に見えていた」
空では『イカロスたかし』が腕を組んでルミ子を見下している。
「防戦一方だな。鬼村ルミ子」
『プロフェシー木本』は手の先をクイッと上げてルミ子を挑発した。ルミ子は不機嫌そうに舌打ちをし、木本を睨みつけた。
「大倉、さっきみたいに鬼村ルミ子を動けなくしてしまいなさい」
「いいぜェ、ちょっとまってな」
『サイコキネシス大倉』は両手を前に広げ、ルミ子にめがけて何かを念じ始めた。
「ふううううううん!!」
ルミ子は一瞬たじろいだが、身体に変化はないままだ。
「ほああああああああ!!」
「ちょっと時間がかかるの。待ってなさい」
「……」
ルミ子はゆっくりと『サイコキネシス大倉』に近づいていく。
「ふぉおおおおおおお!!」
「待ちなさい、必殺技の途中で攻撃するのはマナー違反よ!」
『テレパス藤原』の必死の静止にルミ子は脳内で答えた。
(お前ら全員、ボッコボコにしてやんよ)
瞬間、凄まじい爆音が砂埃と一緒に周囲を包んでいった。遅れて吹き荒れる風圧が砂埃を晴らした時、そこに『サイコキネシス大倉』はいなかった。
「化け物め……!」
ルミ子の前に『プロフェシー木本』が立ちふさがる。ルミ子はニヤリとしていた。
「未来予知!」
木本は数刻先の未来を見た。そこには苦しそうに地に伏せている自分の姿があるだけだった。
「な!?」
「みぞおちをドーーン!!」
酸欠、失禁。木本はぶっ倒れた。
「そ、そんな……! 一瞬で二人も……!!」
『テレパス藤原』は、脳内に流れ込んでくるルミ子の思考に戦慄した。
(顔面に張り手)
(顔面に張り手)
(顔面に張り手)
(顔面に張り手)
(顔面に張り手)
(顔面に張り手)
「いやあああああああ!!!!」
「後はアンタだけよ、イカロスたかし」
たかしは腕を組んだままルミ子を見つめていた。
「さっさと降りてきたら?」
たかしは目の前で起きた瞬殺劇にすっかり戦意をなくしていた。彼の空中浮遊、飛ぶのも降りるのも非常にゆっくりとしかできないのだ。たかしは二時間かけて空に飛んでいたのだが、降りるときも同等の時間がかかる。正直、自分が降りる前に三人によってルミ子は倒されていると思っていたのでこの状況は完全に想定外だった。しかし、空を飛び続けることは非常にしんどいし、めっちゃトイレを我慢していたため、たかしは観念して地上に向かっていた。
「まさに、翼の折れたエンジェルだな」
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