廃村 7

「あんた、話が長いのよ。もっと簡潔にまとめてちょうだい」


「え、ええ?」


 ルミ子は黒岩の話にうんざりしたのか、頭をボリボリと掻きむしり、ポケットからタバコを取り出した。


「つまり、その少女の霊がカラスを操ってアンタ達を攻撃してるってことね。それじゃ、社に案内して」


 ルミ子の肩が強張っている。『ノノメセタ』の一同はそろって嫌な予感がした。


「ルミ子さん、社で何をするつもりですか?」


 恐れ知らずのユウイチが質問をぶつけた。


「壊す」


 予想通りの回答に、予想通りであるにも関わらず皆、動揺した。フユキは皆を落ち着かせるため、ルミ子をこの場に留めるために会話を続けた。


「ルミ子さん、落ち着いてください。我々は怪奇現象を調べに来たのであって、この問題を解決しに来たわけではありません。そういうことはプロの霊媒師にでも任せておけばいいんですよ。それに、もし呪いが真実だとしたら、社を壊して無事に済むとは考えにくいです。あなたはご自分で自身を守ることは可能でしょうが、私達他のメンバーは霊感なんて殆どないのです」


「大丈夫よ、この村に霊も呪いも無いんだから」


 説得が困難だと悟ったフユキはルミ子の耳に顔を近づけ、他の誰にも聞こえないように呟いた。


「撮れ高がないんですよ、ルミ子さん。怪奇現象の一つや二つ、持って帰らないと後藤田編集長にどやされますよ」


「怪奇現象なんて起きないわ」


 ルミ子は少し落ち着いたのか火も点けずにつまんだままのタバコをボックス内に戻した。


「まあ、一日だけ待ってあげるわ」


 そう言い残すとルミ子は家を後にした。


「どこに行ったんでしょうか?」


 マコトの問いにナナセは答えた。


「タバコでも吸いに行ったんだと思います。すぐに帰ってきますよ」








 しかし、ナナセの予想とは裏腹に、その日ルミ子は帰ってくることはなかった。

 

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