廃村 1

 オカルト雑誌『ノノメセタ』は読者から寄せられる情報を基に怪奇現象を調査、取材をする。時には同一の場所に関する噂が同時に寄稿されることもあるのだが、今回取材にあたる『治弔村』はTVでも話題になったために大量の情報が届いていた。


「〇〇県の山中に村に通じる道があった」


「〇〇村が今話題の治弔村のモデル」


「治弔村の入り口には3つの石が奇妙に重なっている。それを崩すと呪われる」


「治弔村の住民はゾンビ」



 情報をまとめると

 1、村は山奥にある。

 2、入り口には3つに重なる石がある。

 3、今も住人がそこで暮らしている。

 4、村の奥に大きな社がある。そこには異形の神が祀られている。

 5、常に異臭がしており、ジメッとしている。

 6、江戸時代より迫害された呪詛師が集まり作られた村。今も日本全土に呪っている。

 7、村に入ると二度と帰ることが出来ない。






「で、そんな村から招待状が来たって?」


 ルミ子は呆れ顔でユウイチに尋ねた。


「そうですよ、しかもルミ子さんご指名ですよ、これは大スクープになりますよ。『治弔村』をついに発見!! みたいに!」


 ユウイチは入社以来の大きな仕事に目を輝かせていた。しかし理由はそれだけでは無いことをルミ子は知っていた。


「別に行くのはいいけど、わざわざ三人で出向く必要ある? アタシとアンタで十分でしょ。ナナセちゃんは忙しいのよ」


「既に後藤田編集長から許可は得ています! 今回は大きな仕事なのでいつもより人数を増やすことには賛成でしたよ!」


 まったく、こういう仕事は早く、的確だ。ルミ子は渋々ユウイチの案に乗ることにした。














 拝啓、鬼村ルミ子様。晩秋の候、貴社におかれましてはますますご活躍のことと存じます。

 さて、私共は今、巷で何かと話題になっている『治弔村』の住人でございます。私は村の代表、「烏丸 宗介」と申します。以後、お見知りおきを。

 今回このような手紙を寄稿させていただいた理由ですが、私の一存で貴方様を是非、この村に招待したいと考えております。この村には世にあふれる噂のような怪奇スポットではございませんが、1つだけ説明のつかない怪奇現象がございますので、ぜひとも調べていただきたく思います。村には小さな民宿がございますのでそちらを利用下さい。6人までなら宿泊は可能です。









「変な手紙ね。なんか子どもが無理してかしこまってるみたいよ。こんなのユウイチくんは信じているの?」

「そんなに変ですかね? あんまりわからないです」


 ナナセはパソコンを操作しながら答えた。


「手紙に書いてある住所を調べましたけど、確かに集落のような映像が衛星写真で確認できます」


 ナナセはパソコンで調べた写真を二人に見せた。それは森に覆われた中に小さく、確かに村のような集まりが映っていた。


「車でこんなとこまで行けるの? アタシ山を歩くのはごめんよ」

「一応、近くまで道はつながっていそうですけど、携帯の電波も届いていなさそうですね。電気があるのかも心配です」

「みんな、もしかして行きたくないんですか!?」


 ユウイチは二人の微妙な反応にショックを受けていた。

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