第51話
俺は美那と一緒に帰宅した。美那の遺体を見たユリは余りの衝撃で意識を失い病院に入院した。龍之介にドア越しから美那が帰って来た事を伝えた。その時は部屋から出て来なかった。夜中、俺が美那の傍に座っていると龍之介が近寄って来て、隣に座った。
「姉ちゃん、何でこうなったの?」静かに聞いてきた。
「父さんにも解らない。でも、悩んでたって友達が言ってた。」
「お母さんの事?」
「いや、違うと思う。今度、友達から美那に何があったか聞く予定になってる。」
「そっか。」
「龍之介は大丈夫か?」
「あぁ。でも、まだお母さんとは直接、顔を合わせられない。お母さん見ると心がざわつく。僕にもどうしていいか分からない。」
「無理するな。焦らなくていい。ゆっくりでいいんだ。父さんは龍之介まで居なくなったら…。」そう言いながら涙が溢れて言葉が出て来なかった。
「…父さん…。」龍之介も泣いていた。二人で声を殺しながら静かに泣いた。親よりも先に子供が死ぬ事が親不孝だって誰かが言ってた。俺もそう思う。だって子どもが死ぬなんて想像もしていない出来事なんだから。でも美那の中では、この世界で生きるよりも死を選んだ辛い事があったんだと思うと、親は無力だなと感じた。娘の生きる気力を助けてあげる事が出来なかったんだから。親って何なんだろう。親って無力だ。全ての親がそうだとは言わない。だが、俺は無力だった。娘を…美那を守ってやることが出来なかったんだから。父親として失格だ。美那の隣で一晩中、自己嫌悪に陥っていた。龍之介は泣き疲れたのか、隣で寝てしまった。龍之介の頭を撫でながら、この子だけは絶対に守っていかなければいけないと心に誓った。
美那の葬儀を無事に終えた。美那の友達が参列してくれた。友達からの話を聞いた。徐々に痩せていく美那をみんなが心配して声を掛けたが、本人が大丈夫と話していたので、そのままにしてしまったと、後悔していた。もっと美那の話を聞いていれば、こんな事にならなかったんじゃないかと泣きながら謝っていた。俺は、みんなのせいではないと…美那が選んだのだから、自分たちを責めないで欲しいと伝えた。むしろ、こうして美那を心配してくれる友達が居たことは幸せ者だと。
「有り難う、友達で居てくれて。」そう伝えた。
「美那、みんなが見送ってくれたぞ。良かったな。」
俺は天に向かってそう伝え、美那を送り出した。
龍之介は美那の葬儀に参列していた。龍之介の中で少しずつ、昔の自分を取り戻そうと必死に藻掻いている様子が見えた。俺は何も言わずに傍で見守り続ける、それが親としての役目だと思っている。
ユリは美那の死から様子が変わってしまった。
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