第46話 美那の心情⑩

 悠太に話してから普段の日常に戻りつつあった。大学では噂になってたけど、私には悠太が居ると思うと嫌がらせも気にならなくなった。友達には申し訳なかったと謝った。

「美那が元気になって良かった。心配したんだから。」

「そうだよ、あの人達、酷かったからさ。」

「友達より彼氏を優先したのはショックだったけど…。」と鋭い指摘を受けた。

「ごめん、ごめん。まさか、みんなが家に来るなんて思わなくて…。」と手を合わせて必死に謝った。

「いいよ。彼氏さんのお陰で美那が元に戻ったんだから。」

「そうだよね、私たちじゃ力不足だったかもしれないし。」と言いながら笑った。

「みんな、友達で居てくれてありがとう。」

「何、今更、改まって。当然でしょ。」

「そうだよ。彼氏さんよりは頼りないかもしれないけど、何時でも相談乗るからね。」今回の一件で友情が深まったように思った。私の周りには良い人達が多くて良かったと実感していた。


 日が経つにつれて、お母さんのニュースが流れる回数も減っていた。それと並行して私への嫌がらせも無くなってきていた。友達と他愛無い話で盛り上がり、バイトしながら悠太との時間も大切に過ごしていた。お母さんには、こんな言い方したら申し訳ないけど…事故がきっかけで友達や彼氏との絆が深まったと実感出来た。何でもない日常が一番幸せなんだと解るようになった。


 今日は久しぶりに悠太とデート。ここの所、大学とバイトでいつも会うのは短い時間しか取れなかったから、一日一緒に居られるのは久しぶり。凄く楽しみ。待ち合わせ場所に行くと、携帯を見ながら悠太が待っていた。

「お待たせ。」悠太の顔を覗き込んだ。

「…おぉ。」あれ?いつもと反応が違う。

「どうしたの?具合でも悪い?」

「ううん。そんな事ない。今日は映画見に行きたいって言ってたじゃん。美那の見たい映画はもう決まってるの?」いつもの悠太に戻っていた。私の勘違いだったのかな?と思った。二人で映画を見たり、ショッピングして楽しい時間を過ごした。

「もう、こんな時間。夕ご飯、何食べたい?焼肉とかどう?」と聞くと

「…美那、焼肉はまた今度でいいか。」

「…うん。どうかした?」悠太の様子が変だ。

「何かあった?私で良ければ何でも話して。」繋いでいた手を強く握った。

「静かに話せるカフェに行こう。」と言われ、近くのカフェに入った。席に案内されドリンクだけを頼んだ。

「何かあったの?元気ないけど…。」いつも明るい悠太がこんなに落ち込んでいるなんて、今まで見たことが無かった。ドリンクが来る前に私から切り出した。

「…うん、実は…親が離婚する事になったんだ。」

「え?」驚いて、その後に何て声を掛けていいか分からず、言葉が出てこなかった。すると、悠太がゆっくりと言葉を噛みしめながら話し始めた。

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