第39話 美那の心情③
「悠太、話があるの。」今日はバイトも学校も休みだったから二人で遊園地に遊びに来ていた。喉が渇いたのでジュースを買ってベンチで休んでいる時に、私は改めて伝えなきゃと思った。
「何?」と悠太はいつもと変わらず、呑気にジュースを飲みながら返事をしていた。
おいおい、私が意を決して伝えようとしてるのに解らないかなぁなんて思いながら
「悠太、私と正式にお付き合いして下さい。」と真剣な顔で言うと、悠太は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。それからみるみるうちに口角が上がり満面の笑みになり、椅子から立ち上がって
「マジで?いいの?嬉しい!ありがとう。」って言いながら私の手を握って上下に大きく振っていた。こんなに喜んでくれるとは思ってなかった。
「これからよろしくお願いします。」と笑顔で言うと
「もちろん。絶対に幸せにするから。」
「うん。」この時、悠太が彼氏で良かったと改めて実感していた。
悠太と付き合いだしてからは大学とバイトの合間に悠太と会うようになっていた。悠太も大学にバイトに忙しかった。でも時間があると私のバイトの終了時間まで待っててくれて一緒に帰った。
「ありがとう。待っててくれて。」
「いいよ。美那が心配だったし。もっと一緒に居たいし。」と二人で手を繋いで帰った。悠太の手の温もりを感じて幸せだと実感していた。何時でも会える訳ではないので、こうして会える時はお互い幸せを感じていた。でも、なかなか会えない時もあって寂しい思いもしていた。
「悠太、会えなくて寂しかった。」と自分の思いを素直に伝えた。悠太も同じ思いをしていたみたいで
「俺も寂しかった。」繋いだ手が更に強く握られた。
「美那、今日…美那の家に行ってもいい?」付き合いだしてからまだ、お互いの家に上がった事が無かった。悠太の言葉に驚いていると
「急で嫌だよね…でも、美那ともっと一緒に居たいんだ。」と真剣な顔だった。何時かはこんな日が来るとは思っていた。でもまさか今日とは。自分の今の気持ちに正直になろうと心に問うと…悠太と同じで私も寂しかったから、この温かい手を離したくない、もっと一緒に居たいと思った。だから、
「うん。いいよ。」と応えた。
「え、いいの?ほんとに?ありがとう。」
「でも、部屋、散らかってるかも。」私は自分の部屋の中を思い出して慌てた。どうしよう…。汚いって思われたら…。とうろたえていると
「気にしないよ。俺が片付けしようか?」と笑っていた。
「いやいや、いいよ。自分でする。」
「俺も手伝うよ。一緒にやろう。急に言い出したの俺だし。」と優しい口調で言ってくれた。
「ありがとう。」
この日を境にお互いの距離が縮まったと思う。私が悠太の家に泊まる時もあって、お互いの家を行き来していた。忙しいと思う事もあったけど、幸せだと実感する事の方がこの時の私は大きかった。お母さんの事故があるまでは。
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