第20話 龍之介の葛藤⑤
学校に行かなくなって半月が過ぎた頃になると、やっぱり学校の事が気になった。携帯を開いてみんなの様子を見に行った。見て後悔した。SNSでは僕が犯罪者のような扱いで書かれていた。あんなに仲の良かった友達も手の平を返したように悪口を書き込んでいた。
僕じゃない。僕は犯罪者じゃない。僕はただ普通に学校に行って勉強して部活に参加して、みんなと楽しく学校生活を送っていただけ。何故、僕はこんな目に合わなければいけないんだと色んな事が頭の中で渦巻いて混乱していた。その時、
「龍之介、ご飯出来たぞ。降りてきなさい。」お父さんが階段下で呼ぶ声がした。
「はーい。」そうだ。辛いのは僕だけじゃない。お父さんだって仕事も行けず辛いんだ。まして一番辛いのはお母さんかもしれない。僕たち家族が味方にならなかったら、お母さんが悲しい思いをするんだ。僕も強くならなきゃと思い携帯を閉じた。階段を下りてリビングのドアを開けた。
「良い匂い。今日はハンバーグなんだね。やった!」
「レトルトだけどな。」と言いながらお父さんが苦笑していた。
「レトルトでもハンバーグはハンバーグだよ。頂きます。」一口食べた。
「お父さん、このハンバーグ美味しいよ。レトルトもこんなに美味しいんだね。」「そうか?良かった。いっぱい食べなさい。」
「うん。」美味しいって言った時のお父さんは嬉しそうな顔をしていた。
最近のお父さん、少し瘦せたように見える。会社も行ってないし、お母さんの事で疲れているんだと思った。
「お父さん、お母さんはいつ頃帰って来るの?」
「ううん、まだ解らないんだ。」そう言いながら僕の前の椅子に座ってご飯を食べ始めた。僕はお父さんが痩せて見えた事が気になり
「お父さん、少し痩せた?大丈夫?」
「ん?そうか?」と言いながら頬を擦りながら
「最近、体重図ってないから解らないけど、痩せたように見えるか?」
「うん、少し…」
「もっとご飯いっぱい食べてお母さんが帰って来るまで体力付けないといけないな。」と笑いながら話していた。お父さんはお母さんの事で大変なのに、学校の事まで心配させちゃいけないと思った。でもお父さんは
「龍之介にも辛い思いさせて申し訳ないな。もう少し我慢してくれるか?」
「うん、僕は大丈夫。勉強は家でも出来るから。」
「そっか、そう言ってくれてありがとう。」お父さんが微笑みながら僕に感謝している。痩せた頬に皺が深く刻まれ苦労が顔に滲み出ている感じがした。
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