第19話 龍之介の葛藤④

「おはよう。」昨日の事が何もなかったように僕はリビングのドアを開けた。

「おはよう、もう大丈夫か?」

「うん、大丈夫。お父さん、今日学校、どうしたらいい?先生から電話何だって?」

「あぁ、その事なんだけどな…先生は龍之介が虐められた事を知らなかったそうなんだ。それで先生と相談したんだけど、暫く学校休んだらどうだ?お母さんの事故が解決するまでの間だけ。」

 僕は学校に行けないんだ。ショックだった。俯き立ち尽くしていると、お父さんが肩を抱き椅子に座るようにと促した。僕の前に座ったお父さんがゆっくりと話し始める。

「龍之介、学校に行けないのは辛いよな。でもお父さんは龍之介が虐められる方が辛いんだ。お母さんの事故は大きかった。テレビでも放送された位だから。近所や地区でも有名になってしまった。学校に行けないのは龍之介が悪い訳じゃない。だけど、お母さんは家の家族だから。お父さんにとっては龍之介もお母さんも大切な家族だから守っていきたい。だから落ち着くまでは家で勉強して欲しいと思う。先生も授業の内容やテストをプリントで持って来てくれるって言ってた。解らない所があれば何時でも電話していいって言ってた。分かってくれるか?」僕は膝の上で握った拳にグッと力を込めた。でもお父さんの話を聞いて、今は家族でお母さんの為に我慢して耐えていかなきゃいけないんだと思った。僕は顔を上げ、お父さんを見ながら

「分かった。僕もお母さんの為に出来る事をするよ。」

「有り難う。でも龍之介は受験生なんだから勉強を頑張ってくれたら、お父さんは嬉しいな。」とお父さんが笑顔になった。お父さんの笑顔を久しぶりに見た。それの笑顔に答えるのは試験に合格する事だと思った。

「分かった。絶対合格するから。」

「お!やる気スイッチが入ったな。頑張れ。」

「うん。」

 朝ごはんを食べて部屋に戻り、机に向かって勉強を始めた。今までの復讐や問題集を繰り返した。だけど、毎日毎日一人で部屋に籠って勉強していると、どうしても集中力が欠ける。そんな時、息抜きに携帯を開いた。開いてもサイトは見ないようにしていた。また、あんな嫌な思いはしたくないから。休み時間として携帯のゲームをしたり動画を見て休憩を取り入れてから、また勉強に切り替えるって感じで自分なりに時間調整していた。

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