第2話

 俺はデスクでパソコンを見ながら書類作成をしていた。もう少しで昼休みになろうとした時だった。

「課長、自分のミスで書類が遅くなりすみませんでした。」と同じ部署の水沢君が駆け寄り頭を下げながら書類を見せた。その書類を見て俺は慌てた。

「水沢君、この案件の締め切りは先週だったはず。決裁に時間がかかるの知ってるだろ、何故遅くなった?」俺は激高した。

「すみません、すみません。」と謝るばかりの水沢君だった。俺は大きな溜息が出てしまった。

「もういい。俺の方で部長に説明しておく。今後このような事がないよう気を引き締めて仕事してくれ。」

「すみませんでした。」再度、深く頭を下げた後、デスクに戻っていった。

こういうトラブルはない方がいいに決まっているがミスをしない人間なんてこの世にいない。ミスの処理対応するのも上司の役目と思ってはいるが、ついつい部下に対して怒りをぶつけてしまう。部下に怒ってもミスが無くなる訳じゃないんだけど…。


 今日の仕事の目途がついた俺はデスクの書類を片付け、鞄を持ち、まだ残っている社員に

「お疲れ、みんなも切りのいい所で上がるように。」と声を掛けた。社内の所々で

「お疲れ様でした。」の声に片手を上げて挨拶を交わしドアを開け、廊下を歩きながら携帯を押した。

「もしもし、俺。」

「お疲れ様。」

「今仕事終わったんだけど、寄ってもいいか?」

「いいわよ。何か少し食べる?」

「つまみ程度で頼む。」

「分かった。待ってるね。」そう言って電話を切った。

俺は会社を出て、家とは反対方向の電車に乗り二駅目で降りた。歩いて十分。目的のマンションに着きインターホンを鳴らす。

「は~い、今開けるわね。」マンションのオートロックがガチャリと解除され中に入る。エレベーターに乗り、目的の階を降り部屋の前に着いてドアフォンを押そうとした時にドアが開いた。

「お帰りなさい。」と抱き付いてきたのは俺の彼女の玲子。俺は急に開いたドアに驚いたが、玲子の華奢な身体を抱き返しながら

「ただいま。」と彼女の首にキスを落とした。癒されると実感しながら強く抱きしめると、急に玲子が身体を離し俺を見つめた。玲子の目に吸い込まれるように、お互い求めあうようにキスを交わす。何分経ったか分からないが俺はキスの合間に

「玲子、中に入れてくれないか?」と言うと玲子が慌てたように顔を離し

「あらっ、ごめんなさい。」と二人で顔を見合わせて苦笑した。

 玲子が俺の手を引いて中に入る。リビングのドアを開けると中から良い匂いがしてきた。テーブルには前菜程の料理とグラスが並んでいた。

「美味しそうだな。」玲子が微笑みながら

「何飲む?」と冷蔵庫の前に立ち聞いてきた。

「まずはビールかな。」

「大丈夫?最近また痛風が良くないんじゃないの?」

「そうだった。じゃあ焼酎の水割りにするよ。」

「了解。」

俺はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外しソファの背もたれにかけた。玲子が焼酎の水割りをテーブルに置いた。

「食べよう。」玲子が手招きしていた。

テーブルに着き椅子に座る。お互いのコップをカチンと合わせ

「乾杯」をした。

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