第63話 強制イベント


『島主の請願、しかと聞き届けた!』


 どこからともなく野太い男の声が聞こえて、レンの目の前に真っ白な光の柱が現れた。

 身構える間もなく、光る円柱が拡張してレン達全員を光の中に飲み込んでしまった。


(……幻覚?)


 レンは周囲に視線を巡らせつつ【アイテムボックス】からHK417を取り出そうとして動きを止めた。

 【アイテムボックス】が機能しなかった。


『未知のエネルギー空間に囚われています。生命活動に支障はありません』


 補助脳がレンの視界に観測情報を表示する。


(位置を探知できない?)


 レンは、腰の9ミリ自動拳銃に手を置いた。

 拳銃で打開できるような状況では無さそうだが……。


『白銀の宝札を示せ』


 男の声が響く。

 

 

(どこだ?)


 レンは声の主を求めて視線を巡らせた。


「宝札って、これよね?」


 キララが手に持っていた銀色をしたカードを上に向けてみせた。


『宝札は示された』


 男の声と共に、キララの手からカードが消え去り、頭上から眩い光が当てられた。

 

「ちょっと……何も見えないんだけど?」


 キララが顔をしかめて不平を口にする。

 直後、

 

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 

 2度、大きな鐘の音が鳴り響いた。


「うるせぇな……なんだ、これは?」


 ケインが耳を押さえつつ、上方を睨みつける。

 その時、頭上に銀色の文字が浮かび上がった。

 

 

******


獲得者:キララ


・<高耐久白衣>


・<分析スキル>


******



「あら? 分析スキル?」


 キララが呟いた。光に包まれたカードが2枚、キララの目の前に浮かんで漂っていた。

 

「私もやる!」


 マイマイが銀色のカードを頭上にかざす。

 

『宝札は示された』


 再び、どこからか声が降ってきた。

 直後、

 

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 

 2度、鐘の音が鳴って、銀色の文字が浮かび上がった。

 

 

******


獲得者:マイマイ


・<高耐久ツナギ>

 

・<洞察スキル>


******

 

 

「おおぅ! アイテムとスキルだぁ!」


 マイマイが拳を突き上げて喜ぶ。

 

「福引きみたいなもんか?」


 ケインとマキシス、ミルゼッタ、アイミッタが、銀色カードを頭上に掲げていった。

 4人共、鐘は1回しか鳴らず、ケインは<演算スキル>、マキシスは<15,000,000 wil>、ミルゼッタは<高耐久スカーフ>、アミッタは<高耐久コート>を手に入れた。 

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 

「わっ!? 3回鳴ったわ」


 キララが声を上げた。

 ユキである。

 

 

******


獲得者:ユキ


・<料理スキル>

 

・<俊足スキル>

 

・<必中スキル>

 

******

 

 

「うわぁ……なにこれぇ~」


 マイマイが仰け反って呆れ声を漏らす。


「さすがユキちゃん、引きが強いわ」


 隣でキララが苦笑を漏らした。

 

「みんな違う物ばかりですね」


 ユキが呟いた。

 確かに、ここまで7人全員が異なるアイテムやスキルを入手したことになる。

 

(必中スキル? なんか、凄そうだな)

 

 レンは、薄れて消えていく表示を見ながら自分のカードを頭上へ掲げた。

 生存率を上げる何かが手に入ればありがたいのだが……。

 

『宝札は示された』

 

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 

「ぎゃぁ~、レン君も3回だぁ~」


 マイマイが頭を抱えて悲鳴を上げた。

 

 

******

 

獲得者:レン


・<覚醒スキル>


・<回避スキル>

 

・<機人化スキル>

 

******

 

 

(なんだ、これ?)


 レンは、獲得表示を見上げて首を傾げた。

 

「なんなの、覚醒スキルって?」

 

 キララが同様の感想を口にする。


「レン君、何やったのぉ?」


 マイマイが首を傾げる。


「機人化ってのは? レン君、何かあったのか?」


「……この空間から戻ることができたら調べてみます」


 レンは、目の前に浮かんだ3枚のカードを手に取りながら言った。

 どうやら、ゾーンダルクでの行動が、獲得スキルやアイテムに影響しているようだが……。

 

(回避は分かるけど……覚醒? 機人化って、この体のマテリアルが影響してる?)


 レンは努めて平静を装いつつ、補助脳に問いかけた。

 

『スキル取得後に情報体を解析します』


 視界中央に、補助脳のメッセージが浮かんだ。

 

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 ゴ~ン……

 

 

『続いて、島主には新たな祝福を得る機会が与えられる』


 男の声が響いた。

 

「祝福とは? それは強制ですか?」

 

 レンは、上方に向かって声を張り上げた。

 

『これは、神々が島主に与えし試練である』


「試練?」


 レンは眉をひそめた。

 直後、周囲の景色が真っ黒に塗りつぶされて何も見えなくなった。





======


銀色カードと引き換えに、色々取得した!


レンだけ、妙なイベントに強制参加させられた!

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