第2話 人造人間
エメリーヌは死体の側に屈みこみ、その袖を握り持ち上げた。死体の手首に火傷の様な跡がある。
「これは拘束魔術の一種ですね。恐らく尋問か何かをしたのかと。以前のようにただ殺したという訳ではなさそうです」
そして、また別の死体の側まで行くと手を翳し、何かの術を唱えた。すると、死体がほわりと光る。
「ほら……魔術反応を示しています。これも多分、拘束魔術を使ったのでしょう。尋問している間にその仲間達が逃げ出さない様に」
確かに五年前の
「あと……もう一つ、重要な事があります」
「何だ?」
こほんと咳払いを一つついたエメリーヌが、レオンティーヌとカルラの顔を見た。
「あそこに死んでいる子供達は全て
「……っ!!」
かつて名のある
それを誰かが復活させた。
神をも恐れぬ所業。
「もしかしたら、
「エメリーヌ、この屋敷を隈無く調べたか?」
レオンティーヌがエメリーヌへと尋ねる。この広い屋敷には多数の警官と特務部隊隊員達が蟻の子一匹逃がさないと調べまわったが、特に何も出てきていない。
「はい」
「隠し扉などは?」
エメリーヌはレオンティーヌが、この屋敷内に
「ありませんでした。私や他の
「そうか、ありがとう。また何か見つかったら教えてくれ」
レオンティーヌとカルラはエメリーヌへと礼を言うと、広間を出てホールへと戻ると、ホールの監視を続けているデシデリアへと近付いた。
「デシデリア、一緒に来い」
「はいっ!!」
敬礼し返事をするデシデリア。例え一緒に生活しているとはいえ、この場では上官と部下。レオンティーヌはカルラとデシデリアを連れ、屋敷の外へと出た。
広い庭である。
よく手入れされた花壇や樹木。各所に置かれた白いベンチとテーブルも外に置かれているのに関わらず綺麗に磨かれている。
その庭にも数人の警官や特務部隊隊員達がおり、探索を続けている。そして、レオンティーヌとカルラの姿を見ると姿勢をただし敬礼した。それに答礼し労いの言葉を掛ける二人。少し離れ、デシデリアがその様子を黙って見ている。
『レオンティーヌ様は、私に着いてこいと言ったけど……何をするつもりかしら……』
デシデリアには何か特殊能力がある訳ではない。もしかすると途中覚醒する可能性はあるが、今のところその兆候は見られていない。庭の探索を行うなら、探索魔術に長けた魔術班の隊員を呼んだ方が良いのだろうが、何故かレオンティーヌはデシデリアを連れている。
「ふむ……特に変わった所はないか……」
一通り広い庭を一周したレオンティーヌが、カルラとデシデリアの方を見て言った。
「魔術班の者達が一通り、探索魔術で調べたと言っていましたからね……それを覆い隠す術式を発動しているのなら別ですが、あのエメリーヌが気づけない術式を使える者がこの国にいるとは」
「確かにそうだが……しかし、相手は
レオンティーヌの言う通りであった。確かに魔術班が探索魔術で探したとしても、相手がその上を行く
この国が誇る
少し考え事をしていたレオンティーヌが、ちらりとデシデリアを見た。視線を向けられ戸惑うデシデリア。レオンティーヌが自分に何を期待しているのか分からない。
「デシデリア、昔、お前の住んでいた屋敷の庭と似ていると思わないか?」
確かに似ている。庭だけではない。屋敷の造りもだ。玄関を入り広間へと行く前にある二階へ上がる階段のあるホール。そして……
デシデリアがこの屋敷に来て感じていた違和感があった。しかし、それは
その違和感の正体に気付いたデシデリア。
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