呪箋

ポストにハガキを落とした時、ようやく終わったと思った。


差出人不明のハガキには、やけにうねった文字が連ねてあり、ハガキというより呪具である。

おぞましさに破り捨てようと思ったが、よく見ると極めて流麗な筆致で、いつしか読み耽っていた。

文の意味は掴めない。ただ、書いた人が、ある人への悲しみと呪いを持って書いた、という事は伝わった。


気がつくと私はペンをとり、そのハガキの続きを書いていた。まるで差出人に操られているかのようだ。文字を通して体に熱がはしる。その人の感情が脳内を支配する。

小さく文を呟きながら書き綴り、涙さえ零して続け、ようやく手が止まった。

目の前の便箋には、ハガキと全く同じ筆致の文と、知らない住所が書かれていた。


お題「見えざる慟哭」

https://twitter.com/hacca0505/status/1367829216817942531

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