もえいず

埋められたのは冬の初めだった。

黒土はすっかり凍っていて、彼は獣じみた呻きをあげながら穴を掘り、私を横たえた。逆光で顔は見えなかったけれど、冷たい頬に温かい物が滴った時、泣いているのだと思った。


不自然に盛り上がった土を雪が上手く隠してくれ、彼は何事もなかったかのように生活を続けていた。私は腐りゆく肉体を抜け出し雪の小山に腰かけて、窓から覗く彼とその家族が、笑い合ったり愛し合ったりしている様子を眺めた。


幸せに死んだ私は、やがて復讐を望んだ。

日が柔らかくなって雪が解け、虫や獣が私の腐臭に気づいた時、私はある契約と共に彼らへ己を捧げた。


裏庭の異変に気付いた彼と妻が近づいてくる。

―久しぶり、私帰ってきたの

夥しい這い虫と野犬とカラスに彩られた私は、二人を大いに歓迎した。


お題「春がくる、わたしはかえる」

https://twitter.com/hacca0505/status/1366779987802558464

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