第18話 揺らぐ心と降り注ぐ加護

 “守護者”にとって“みまもり”対象との関係性は重要だ。最重要といってもいい。

 実際、勇者パーティに対する支援はレベル上限近くでさえ思うようにいかない点が多々あった。それを考えればリセット後に出会ったひとたちとは順調に信頼を築けているような感じは、する。

 でも……なんか思ってたのと違う気もするのだ。

 良いことか悪いことかは、わからない。あまりに真っ直ぐ真摯に向けてくるネルの剥き出しの好意に、ぼくは戸惑っていた。それは、崇拝といってもいいほどだ。

 スキルの影響なのかな、これ。


・名前:アイクヒル(16)

・職業:守護者(レベル12)

・HP:94/120

・MP:88/120

・スキル:“看護みまもり”“紐帯つながり

・習得魔法(初級):“収納ストレージ”“浄化クリーン”“防壁バリア”“窃視ヴォイエ”“探知サーチ”“治癒ヒール”“回復キュア”“隠遁ステルス

・習得魔法(中級):“増強ブースト


※紐帯親密度:(アーシュネル:40)(ファテル:20)(ミーアス:20)(ペリル:20)(イーフル:10)(ミルトン:10)(トール:10)(メーアス:10)(カイエン:10)


 見たことないスキルと魔法がある。前二回のレベルアップでは生まれなかったものだ。ネルの力がすごいことになったのは、“増強これ”によるものだろう。

 そして、彼女が妙に懐いてくるのは、おそらく“紐帯こっち”が原因だ。


 項目一番下に追加された親密度とかいう数字がまずい気がする。これは、非常に……だ。人間関係を数字で表されるのも冒涜的な感じがするし、そもそも親密になった過程と理由がぼくのスキルと魔法によるものなので妙な罪悪感がある。

 こういうのは、あまり見たくなかった。院長先生から忠告された通りだ。“ステータスは、ただの数字”なのに。“それに縛られたら道を誤る”なんて、わかってはいるのに。


「……どうしたの、アイク?」

「な、なんでも、ないよ」


 熱っぽい目でぼくを見るネルに、少し気後れする。好かれているのは自覚してるけど、どこか騙しているようで申し訳ない。それでも彼女の力は必要になるのだから、ますます罪悪感が募る。

 いまで親密度が40って、上限がいくつか不明ながら、もっとずっと上がある感じなのに不安を覚える。


 しかも、常軌を逸した“増強ブースト”が掛かっている。ネルのステータスにあった“レベル+40”は、紐帯親密度によるレベル補正だろう。

 レベルで50を超えると冒険者でも中堅以上。百を超えられるのはごく少数の一級冒険者や、“勇者”などの選ばれた特殊戦闘職だけだ。勇者パーティでさえ初期は百を切ってた。決別したときのレベルアップでも、“鑑定”を掛けなかったので知らないけど百三十やそこらだろう。

 ネルは、まだ体力気力だけの荒削りな自然体ナチュラルでしかないのに、冒険者時代のぼくを超えてる。


 ごめん、ネル。

 もらった気持ち以上のものは、ちゃんと力として返そう。距離感は間違わないようにしないと。だって、ぼくは彼らを救った後、きっとどこかで……


 また、無能力者レベル1に戻ってしまうのだから。

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