第19話 肉の宴
「「おいひぃ……」」
「いっぱい食べてね。どんどん焼けるからね」
怪我を
美味い
見た目は人型の魔物だから正直あんまりそそられる代物ではなかったけれども、付き合いで口にしてみたらこれが絶品。柔らかく繊細な肉質で、噛むたび風味豊かな肉汁が染み出す。拒絶するのは申し訳ないから、せめて臭み消しだけでもと香辛料を提供したのも大当たりだった。南部から輸入された混合スパイスが脂多めのオーク肉にとても良く合う。
「ありがとね、アイク。みんな、すっごく喜んでる」
「ああ、うん。オーク肉、こんなに美味しいんだね。知らなかった」
集落の女性陣は、ぼくが渡した小刀で大量のオーク肉を器用に切り分けてくれた。皮も骨も内臓も余すところなく使って、衣服や寝具や建材や保存食にするのだとか。そういやここのひとたちの半分以上は、獣や魔物の毛皮を身に着けている。
「「「おいひぃ……」」」
子供たちは、さっきから“おいひぃ”しかいわないようになっていた。最初は遠慮してたみたいだけど、山ほどある肉を全部食べたって良いんだと伝えると、涙目で感動しながらガツガツと詰め込み始めたのだ。
「オークなんて脅威でしかなかったから、小さな子たちも初めて食べるの。食料は、あるものを分け合うしかなかったし」
「そっか。アーシュ……
「うん。すごく美味しい。それに、塩と水も、こんなに」
塩は過去に落ちてきた冒険者集団の荷物から回収したものだけ。水なんて、あの沼の濁った水しかなかったらしいのだ。
水も塩も、“
贅沢に慣れた勇者パーティの連中は見向きもしなかったけどな。
「ねえ爺ちゃん、後でそこの燻製小屋に棚を足してくれる?
「おう、任しとけ。明るくなったら深域の森で、
「あたしも付き合うよ。けどそれ、枝拾いのため……なわけないよね?」
「枝は
カイエンさんと集落の大人たちは、アーシュネルも交えて話しながら、木を切り出して運ぶ計画を練っている。どうも
その森というのは危ないところらしく、直接下まで降りるのはネルとカイエンさんだけ。大人たちは運搬のサポートに専念する方針のようだ。
「カイエンさん、その“深域の森”ってとこ、ぼくも行って良いですか? 収納があるんで、大物も持ち運べますよ。武器もあるし、木を切る道具も手斧と
「そりゃ大助かりじゃ。ぜひ頼む」
「アイクが来てくれるなら、日程は半分で済むかも」
「半分って、まさか日帰りか? そりゃ無理じゃろ」
怪訝そうな顔のカイエンさんに、アーシュネルが傍に置いた猫手メイスを指して胸を張る。
「大丈夫。
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