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 彼が消えて。

 全てが、まるで彼が最初から存在していなかったかのように、動いている。彼の席はない。彼の姿も。

 漫画。

 漫画は、存在していた。5巻。買ったけど、読む気が起きなかった。これを読んで、そして、読み終わったとき。なんとなく、彼のことを忘れてしまいそうな。そんな気がしたから。

 ゆっくり、じわじわと、関係を詰めていこうと思った。でも、もう、彼はいない。存在自体が、ない。どこにもいない。

 そう。

 わたしの左胸と同じ。

 彼の手の感覚。なんとなく、思い出す。

 それからは、左胸と下着の間に綿を入れている。見た目上は、ちゃんとした普通の胸。ようやく、普通の人間になれた気分。

 それでも。左側は、彼の領域。彼にしかさわらせない。なんとなく、そんなことを思いながら、日々を過ごす。

 彼は、いない。

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