第10話

 フォレストキシニョフ……メリウスにとってはあまりいい思い出がない地ではあるだろうな。自分のことを殺そうとしていた奴がいたり、国民からは無能だなんだと蔑まれていたり。


 だけど、メリウスはフォレストキシニョフの王であるエイデリアンさんの娘だ。しかも、エイデリアンさんはメリウスの事を思って態々メルジーナ様にまで依頼をして、ディルクロッドの魔法学園に入学させたのだ。


 だから、あの人にだけは伝えなければならない、と俺は思う。


 だけど、もしメリウスが拒否をするならばそれはそれで仕方ない。フォレストキシニョフへは俺一人で赴く。


 そう思っていたが……。


「お父様の所ですか……」


「あぁ。別に、無理しなくてもいいんだぞ。メリウスがあそこをよく思っていないことは知っている」


 だが、彼女は俺が思っていたよりも強かった。


「だから、俺一人でエイデリアンさんの所に行っても――――」


「いえ、行きます先生」


 メリウスは、ゆっくりと俺の手を握った。


「確かにあそこは大嫌いだし、いい思い出なんて何もないし、殺したいほどに嫌いな人だっています。……でも、お父様にはきちんと伝えたいです。ちゃんと、大人になったということを」


「そうか……よし分かった」


 俺は、握られていない方の手でメリウスの頭を撫でる。


「わぷっ」


「それなら夜にこっそり行こうか。エイデリアンさんをびっくりさせてやろう」


 そうして、時間が経って夜になり、俺たちはフォレストキシニョフへと転移した。


 前にこっそりとフォレストキシニョフへ行ったため、前回の時のように態々馬車で移動する必要が無い。転移で人気がない路地裏的なところに出た。


 なぜ俺が夜を選んだのかと言うと、下手に騒ぎを起こす訳にはいかないからである。それに、昼間行ったらエイデリアンさんも仕事中だろうし。


 前回行った時も夜で、その時は仕事をしていなかったと思うので、時間もありそうで、人に見られる心配もないこの時間帯を選んだ。


 エイデリアンさんの魔力を検知……よし、前の時と場所が同じで、しかも周りにも他の人の魔力反応はなし。


「メリウス。行くぞ。心の準備は?」


「……す、少し待ってください」


 すー、はー、と俺の手を握りながら深呼吸をするメリウス。三回ほど繰り返し「行きます」と言ったため、転移を始めた。


 転移先は、エイデリアンさんの私室と思われる部屋。そこに、エイデリアンさんはこちらに背中を向けた状態で座っていた。


「……お父様!」


「……メリウスか。お前には、二度とこの国の敷居を跨ぐなと言ったつもりだが」


 メリウスが声をかけると、ゆっくりとこちらを向いたエイデリアンさん。その言葉に、一瞬だけメリウスが萎縮したが、その後に何か言い出す前に俺がメリウスを抑えた。


「エイデリアンさん。単刀直入に言いますが、この度はあなたの娘さんと結婚することになりました」


「――――何?」


 俺の言葉に、ピクリと眉を動かした。


「つきましてはその御報告と、エイデリアンさんにご挨拶を――――」


「――――めん」


「え?」


「認めん認めん認めん!私の可愛い娘を誰が嫁になぞだすか!!」


「え”っ……」


「お父様!?」


 豹変した。そして思い出した。態々死刑されるはずだったメリウスを国外にまで逃がすほどにエイデリアンさんはメリウスの事を愛しているのだと。


 今までが順調すぎて忘れていたが、大抵の父親はこういう反応である。


「例えメリウスを救った神童の子であろうと認めん!!表にでろ!私が直々に試してやる!!」


「………お望みとならば!」


「ちょっ!!お父様!!ティルファさん!?」


 止めてくれるなよメリウス!メリウスと結婚する為ならば試練なんぞ軽くひねり潰してやるわぁ!!


 そうして、意気揚々と窓から飛び出た俺とエイデリアンさんは、何故か魔法の打ち合いで勝負をすることとなった。


 エイデリアンさんは優秀だった。魔法使いという目線で見れば、世界でも10本の指に入るほどに。でも、現実は残酷で俺は神童である。俺は、特に何もしないでその場に突っ立っているだけでエイデリアンさんは消耗した。


「ぜぇ……ぜぇ……!」


「な、なんかすいません……」


 目の前には、魔法の撃ちすぎで、地面へと仰向けになって倒れていた。なんかごめんなさい……。


「……ふぅ、すまなかったな神童の子。メリウスの前では、正直に言えそうになかったのでな」


「それならそこまで疲れる必要はなかったのでは?」


「そこはほら……ノリだよ」


 この人、第一印象と全然違う。多分、娘の前ではかっこいい父親でありたくて作ってたんだろうなぁ……。


「私としては、最初から君を認めていたよ。メルジーナからも聞いていたしな……娘を頼んだ」


「はい。必ず、幸せにしてみせます」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

拝啓、これを今読んでいる読者の皆様へ。

お元気ですか?私は元気です。前話を投稿してから一体いくつの日が過ぎたのでしょうか。


私が小説を書いていない間に、ウマ娘は新シナリオが追加され、私は学校を卒業して今は車校に通い、私の弟子的な人がラブコメで猛威を奮ったりと色々ありました。


そのうえで正直にいいます。ぶっちゃけ投稿サボってました。ごめんなさい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る