新たな神話大戦
第1話
「これはただ単純に質問なんだけど」
「なんだ?」
時は少し戻り、まだティルファたちが攻撃を仕掛けるちょっと前の出来事、メルジーナはエリアスに向かってふと呟いた。
「あなた、見ない間に随分と力をつけたようね。一体どのように訓練をしたのかしら?」
「………分かるのか?」
「えぇ。前にあった時とは大違い。流石にマリナと比べると見劣り――――まぁ、あれは彼女が特別なだけだから比べるのも可哀想だけど、その一歩手前まであなたは実力を伸ばした。純粋に、興味があるわ」
メルジーナの目には、エリアスは全くの別人のように見える。態度もそうだし、性格についてもものすごく丸くなった。
だから、本当に興味本位であるが知りたい。何がエリアスをそこまで大人しくさせたのかということを。
「……黎明の塔は知っているか」
「……本当なの?」
「本当だ」
まさかの答えに、メルジーナは軽く引いた。
黎明の塔は、大昔の神童が作った『いくら死んでも死なない訓練場』、別名『トレーニングルーム』と言われる場所である。
中は未だに解明されていない不思議な魔法で構築されており、どんなに致命的な攻撃を受けても死なないし、どれだけ魔力を使っても無くならない。だから、自分を鍛えるのにはうってつけの場所であろう。
だがしかし、その塔にはべらぼうに強い魔物がいると言われており、今まで何人もの人物が黎明の塔へと挑んだが、全員が開始三十分でリタイアをしている。
「……やべぇ、今思い出しただけでもムカついてきた。あそこで鍛えられたのは事実だが――――」
そして、エリアスは語り出した。
時は大幅に戻り、ティルファたちが魔神ビンスフェルトを倒してすぐのこと。ヌワイを後にしたエリアスとレジーナは、天高く聳える塔の目の前にいた。
「……ここが黎明の塔か」
「大きい……初めて見たけど、こんな風になってるんだ……」
若干、大きさに少し萎縮をした二人だが、エリアスは頭を横に振ってその気持ちを押し出した。
「……よし、行くぞレジーナ」
「う、うん……」
覚悟を決めたエリアスが塔の中へ入る。入口に扉のようなものはなく、ただただ大きさ約3m程の暗い穴が二人を歓迎する。
暗闇に足を踏み入れると、直ぐに明かりが着いた。咄嗟の事だったので二人は手で明かりを防いだ。
「ようこそ、トレーニングルームへ。二名様ですか?」
「…………あ?」
そして、二人が手を退けた視界の先には、二対四枚の羽を生やした妖精のような少女がふわふわと浮かんでいた。
いきなり現れた少女に少しだけ警戒心を抱きながらも、エリアスは返答する。
「違う。挑戦するのは俺だけだ、レジーナは関係ねぇ」
「了解しました。訓練モードを一人用へと変更をされます。お連れの方はこちらへどうぞ」
「え、私?」
「はい」
すると、もう一人同じ姿の少女がレジーナが立っているすぐ側からヌッ、と現れ、レジーナは軽く悲鳴を上げた。
「こちらへどうぞ」
「えっと……どこに?」
「待機所でございます」
た、待機所?と声を出しながら、レジーナはおずおずと少女の後をついていく――――と思いきや、エリアスの方へと近づき、頬にキスを落とす。
「その……頑張ってね、勇者様」
「……あぁ、元気出た」
そして、今度こそ少女の後を着いていったレジーナ。どうやら待機所はすぐそこにあるらしく、扉を開けたレジーナが「なにここすごーい!!」というはしゃぐ声まで聞こえたところで、エリアスは妖精の少女へと目を向けた。
「まず、お前はなんだ」
「ピクシーです。このトレーニングルームの管理をしているAIでございます」
「AI……?」
聞きなれない単語に少し眉を寄せたエリアスだが、本題はそこでは無い。それに、襲ってこないところを見れば敵では無いのだろう、多分。という判断を下した。
「……まぁいい。ここでは強くなれると聞いて来たが、あってるのか?」
「はい。諦めるかどうかはあなたのご自由ですが、続ければ確実に強くなることは保証します」
「そうか。それが聞ければ充分だ。おいピクシー、とっとと訓練をさせろ」
「その前に、あなたはここを利用するのは初めてなのでとあることをしてもらいます」
そうピクシーが言うと、ゴォォォンと音を響かせながら地面が振動する。その程度で倒れるほど柔な鍛え方はしていない。
「……なんだこれは。これがあることか?」
「いえ、ここからが本番でございます」
床から、階段が螺旋状に現れる。
「今から、あなたには『チュートリアル』を受けてもらいます」
「………ちゅーとりある?」
「はい、ここを利用する上でとても大事なことです」
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