第4話
『……』
魔神、ビンスフェルトは自身が小手調べとして放った四本の触手が倒されたことにしっかりと気づいていた。
やっと封印から逃れて、すぐにこの世界を滅ぼしたかった所であるが、まだ力が足りない。
今出ていっても、長年封印されていて力が弱っている自分の力では、為す術なくやられてしまうことは目に見えている。
更には、自身の権能の力が半分向こうにあると言うのにも、厄介なことに拍車をかけている。魔神に腕があったのなら、今すぐにでも頭を抱えたいところだろうか。
だが、奪われてしまったものは仕方ない。それは素直に向こうを賞賛しようと心を入れ替えたビンスフェルトは、力を回復させるために眠りにつく。
人間を、滅ぼすために。
「休眠状態?」
「あぁ」
その後、無事に宿泊施設へと戻ってきた俺たち。そこで働いていた従業員の皆さんは既に避難を完了させていたようである。その際、ルーナ達がここのオーナーから『あの魔神を倒すまで好きに使ってくれて構わない』とありがたい言葉を頂いたので、遠慮なく使わせてもらうことに。
部屋に戻り、ティルに魔神が直ぐに攻撃を仕掛けてこないことに疑問を覚えた俺は、その事を質問すると「恐らく、休眠状態にいるのだろう」と答えた。
簡単に言うならば。力を蓄えるために今は寝る。ということだろう。長年の封印で随分と力が削がれているようだ。
「それじゃ、今がその魔神を倒すチャンスじゃない?」
「チャンスというのは間違いではないが……」
カレンが言ったことは間違いではない。力が弱っているうちに叩けるものなら叩く。俺だってそうしたい。
「残念だが、あの魔神の居場所を正確には炙り出すことが出来ない」
「え、先生でも無理なんですか?」
俺がそのことを告げるとメリウスから驚愕の視線をぶつけられる。おい、俺にだって無理なことはあるからな?
それで、どうして俺が魔神の居場所を正確に把握出来ないというと、ここら辺一帯に魔神の強い気配が垂れ流しにされているからだ。
その気配が強すぎて、どこにいてもビンスフェルトの強い力を感じ取れてしまうために、感覚が当てにならない。
「それじゃ、ティルはどうかしら?」
ルーナがティルに話しかけるが、ゆっくりと首を横に振る。
「すまない、ご主人様の番よ。今の私は完全にあの魔神との繋がりが切れているのでな。まったく検討もつかない」
「そう、それなら仕方ないわね……」
うーん、と全員で首を捻る。どうにかして弱っているうちに倒せないだろうか……。
「………ん?」
その時、ポンッ!と俺の頭上に魔法手紙が現れる。あぁ、そういえばメルジーナ様に増援を頼めないかの魔法手紙を出していたな。
はらりと降ってくる手紙をキャッチしてから封を切る。突然現れた手紙を見る度に、皆がワラワラと俺の周りに集まってきた。
『拝啓、ティルファへ。そちらの現状を私達の方でも確認したわ。大変なことになっているわね。
さて、増援ということだったけれどごめんなさい。私は今忙しくて家から――――というか、執務室から一歩も出れない状態なの。でも、マリアは向かわせるから安心して頂戴。
それと、遅れてフィアンもそちらに向かうらしいわ。気をつけて、全員で帰ってくるのよ?
メルジーナより』
……え、この人。メルジーナ様ってこんな丁寧な手紙書けるの?俺が知ってるメルジーナ様じゃない。
しかし、マリア様と姉さんが応援として駆けつけてくれるのか。それなら安心して魔神を討伐出来るな。
……しかし、この手紙、本当に誰?あの人、二言目にはいつもいつも「ベッド行きましょう?」とかいう人ぞ?マジ誰?
その後、メルジーナ様に『この手紙送ったの本当にメルジーナ様ですか?』というのを送ったら、次の日に『喰っちまいますわよ』と返された。
良かった。しっかり本物だ。
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『魔導少女達とススムミチ!』
『ドイツ人の美少女義妹は既に付き合っているつもりでいる。』
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