第3話

「チッ!」


 やらかした!本当にやらかした!着々と俺の事を閉め殺そうと俺の全身に触手を巻いてくる。人生で一位、二位にランクインするほどのやらかしだなかこれは……。


「フンっ!」


 体の表面に沿うようにして結界を発動させて、触手を全て吹き飛ばす。俺を拘束しているうちにもう一本の触手が来ていたが、それら全反射フルカウンターで攻撃を返す。


「うぇ……気持ち悪…」


 触手に巻き疲れたところがヌメヌメしている。服の上からだったからまだ良かったが、それが肌にぬめり着いてマジで気持ち悪い。


 とっととこれ終わらせて服脱ぎたい……。ということで、終わらせることにする。


星堕準備サンセット


 現時点で俺の最大の攻撃力を誇る禁忌指定魔法。今はロンギヌスを解放していないから、全力とは言いきれないが、それでもこの触手ごと海を蒸発させる分には充分だろう。


 背中に擬似太陽が浮かぶ。全てを燃やす自然の脅威。


太陽の嘶きアトミックフレア


 太陽が海に落ちる。分裂しようが、先程とは違い範囲は桁違いだ。逃げ切れるわけがない。


「蒸発しろ」


 ジュっ!!と太陽が落ちて、その部分の水分が蒸発する。太陽が消えたその場には、ぽっかりと一瞬だけ穴が空いた。


「よし、こっちは終わり……ティル!」


「案ずるなご主人様。こちらも終わる」


 ティルの方はどうなっているのかと思い、目を向けると上手く大罪武器を使いながら触手とやり合っている姿が見える。


 ティル自身は触手の攻撃を上手くいなしたり、触手の表面を走ってい斬撃を与えている。空中に浮いている大罪武器はそんなティルをサポートしながら強大な一撃を与えている。そんな所か。


「とりあえず支援するぞ。とっとと終わらせてくれ」


「承知した」


 俺はティルに向けて身体強化の魔法を掛ける。一瞬きちんと掛かるか心配したけど、次の瞬間には先程よりも早いスピードで移動しだしたので、杞憂だっだ。


「行くぞ、ルシファーよ。そこから動くな」


 タンっ!とジ触手二つを纏めて処理できる位置飛び上がると、弓を構える。


 確かあれは、『傲慢の弓ルシファー』である。傲慢の権能は、命令の強制執行。強い存在であるほど効き目が薄くなり命令を聞かなかったり、効果が薄くなったりする。更に、その命令の言葉によってもそこが関与してくるらしく、使い勝手が難しそうな武器である。


 ティルの命令により、触手がビタっ!と動きを止めた。そして、魔力で出来た矢を番えて放つと、先程のベルゼブブが放った一撃に負けず劣らずの一撃が放たれる。


 動くことが許されない触手は、大人しくその一撃を受け消滅。矢を放ったティルは、その反動か大きく空中に投げ出されて――――


「おい」


「ナイスキャッチ、ご主人様」


 ピンポイントで俺の方に来た。流石に受け止めないという選択肢はないのでしっかりと自分に身体強化と衝撃吸収の魔法を掛けてから受け止めた。


「お前、絶対調整したろ?」


「さて、なんのことかな。それよりもご主人様、お疲れ」


「あぁ、お疲れ」


 お姫様抱っこをされているティルが、労いか俺の頭を撫でてきた。何してんだコイツ。


「本当に、よくあの触手を初見で倒したものだと感心している。流石は私のご主人様だ」


「全て消せば問題ないから……そろそろ下ろすぞ」


「む、もう少しこの状態を堪能しておきたかったが……まぁいい」


 ゆっくりとティルを地面に下ろす。その後、首の骨をポキポキと鳴らす。


「ふぅ、これで先兵か……これ、マジでメルジーナ様とマリア様呼んだ方がいいよな」


 あの人たち居ればまじで百人力――――どころか、百万人力である。呼んだら来るかな……メルジーナ様は難しそうだけど。


「よし、皆のところに戻るぞ」


「承知した」


 くるりと身を翻して海へと背を向ける。今はみんなと情報を共有しなければ。今のところ、強大な強い力はここよりも遠い所で反応がある。


 魔神が今何してるかは知らないが……攻めてこないのはありがたい。しっかりと対策を取らせてもらおう。



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