第6話
「せんせー!」
背後から元気に俺を呼ぶカレンの声が聞こえる。振り返ると、そこには水着を着た三人がいた。
「おぉ。三人とも、よく似合ってるぞ」
メリウスは緑色の水着に、これまた魔法使い御用達のローブを羽織っていて、カレンもまた同じような格好をしている。合わせたのだろうか。
ラミュエールも白の水着が良く似合っている。健康的な美しい肌が太陽の光で輝いている。眼福だなこれ。
「ティルファ様、視線がやらしいですよ」
「とと」
ラミュエールに後ろから抱きつかれ、軽く注意されたので少し反省。流石にジロジロと見すぎたなと思いまたもや目線を海に―――――
「………」
いる。何かがいる。次に瞬きした瞬間には見えなくなったが、絶対に何かがいた。
「さて、それじゃ皆揃ったことだし、思いっきり遊びましょうか」
「俺は後でいくよ。今は皆で頼しんでおいで」
手を振って見送ると、ラミュエールを除く全員が海に向かって歩き出した。ちなみに、四人のうち三人が羽織っているローブはきちんと防水仕様である。
「……見えましたか?」
「ということは、お前もか?」
抱きついたまま、後ろから四人には聞こえない音量で耳元で囁くラミュエール。俺の言葉に黙ったまま頷いたラミュエールは、一度離れると俺の真正面に移動した。
「ティルファ様には一足早く伝えたいと思います。今、私達が直面している災厄について」
「災厄?」
「はい。聡明なティルファ様なら、これが仕組まれたものだと言うのには想像が着いていたかと思いますが」
「ま、そうだな」
だってMVP賞のバックにアイセーヌがいるのなら絶対に何かここであるに違いない。普段は介入しないのに介入し、更には聖女自ら代行試合を見に来るという超珍しいこと。
これだかの判断材料があれば、絶対に良からぬことをラミュエールが聞いた事は明らかである。
「単刀直入に言います。直に、魔神が目覚めます」
「――――!」
その言葉を聞いて、大きく目が見開いた。
魔神とは、かつて突然にこの世界に舞い降りた、邪神を越えた存在である。
名前は定かにはなっていないが、邪神よりも強い魔法や攻撃を行い、更には『大罪武器』という七つの武具がそれぞれ意思を持って独立しているという超面倒臭い存在で、当時は魔神のせいで人類が絶滅しかけた。
しかし、とある人間が自分の命を犠牲にして何とか封印し、海の奥底に眠った。それは、今子供に大人気な英雄譚として広まっている。
「おいおい……魔神とか大丈夫なのかよ…」
「本来なら、全然大丈夫じゃないですけど……でも、私はしっかりと見ました」
ラミュエールが俺の手を握り、目を見つめる。
「私は、あなたがあの魔神の前に立ちはだかり、倒す姿をキチンと見ました。私はあなたなら出来ると信じてます」
……魔神、か。悪魔よりも、邪神よりも強く、凶悪な存在。
「……へぇ?」
「……!」
俺の魔法が通じるのか、少し楽しみになってきたな。
「一応念の為に聞いておくけど、メリウスがMVP取らなかったらどうなってたの?」
「有り得ませんよ。神童が一般魔法使いに負けるなんて世界が滅ぶ確率より有り得ません。だから私も強気に出れたんです」
「いや、まぁ確かにそうだけど……」
「そして、ティルファ様は夢通りに私の目の前に現れてくれました」
ラミュエールが俺の手を自身の頬に持っていく。ぷにっ、とほっぺたが柔らかい。
「ティルファ様、この世界を救うために力を貸してくれますか?」
「当然。そこまで言われて燃えない奴は男じゃないな」
ラミュエールの頬を人なでした後に、頭に手を置いた。
「任せな。お前の友達は魔神すら圧倒してやるよ」
「……友達じゃないです。私はティルファ様のお嫁さんです」
「そ、それはまだ時期尚早じゃないんですかね……」
ラミュエールは可愛いし、性格もいいし、別に嫌いになる要素とかどこにもないが、まだちょっとそれについては考えさせて欲しいなぁ……って。
「ふふっ……既成事実でも作れば責任取ってくれますか?」
「お前マジでそれやめろよ?寝てる間にとか絶対にするなよ!?」
思うだけなら別に俺に被害は来ないけど、実際に行動したらダメだからな!
「せんせー!聖女様ー!一緒に遊びましょー!気持ちいいですよー!」
その時、カレンの声が海から聞こえる。目を向けると満面の笑みでこちらに手を振っており、その背後では三人が水をかけあっていた。
「……行くか。ほい」
「……ふふっ。ありがとうございます、ティルファ様」
手を差し伸べると、ラミュエールはゆっくりと俺の手を握り、それを確認してから立ち上がらせた。
「折角ですので、手を繋いで行きませんか?」
「……お前これ、ただの手繋ぎじゃねーぞこれ」
指をサラリと絡めるな。
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最近、新作のアイデアがポンポンポンポン湧きまくる……いつだそっかなぁ……多分、近日中には出します
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