第5話

「ここか」


「はい!………メルジーナ様のお家を見なければ大きいですねって言えたんですけどね……」


 ラミュエールに連れられ、宿泊する宿に着いた俺たち。一目見た時は「おぉ~」と大きさに一瞬だけびっくりしたけど、よくよく考えてみたらメルジーナ様のお家の方がでっかいなって。あの人の家、最近横じゃ足りなくなったから縦にも伸ばし始めたし。あの人、いずれほかの街にも手を出さないでしょうね?マリナ様のオーラがどんどん邪悪になっちゃう。


 宿の受付の人に、ラミュエールが代表であの券を見せると、なんかめちゃくちゃ頭を下げられた上で部屋まで直接案内をされた。どうやら、転移魔法の魔法陣で移動するらしく、魔法使いの俺としてはそっちの方に多少興味が出たがここはグッと我慢し、スタッフの人に大人しく着いていく。


「では、ごゆっくりどうぞ」


「………うわ」


 反射的に、そういう声が出てしまった。部屋の中な入ると、めちゃくちゃ豪華な家具が置いてあったり、部屋も広く前にある巨大な窓からは海が一望できる。


「なにこれ。すごっ」


「……!る、ルーナさん!このソファとってもフカフカです!」


「…………あ、これダメになるやつ…」


 早速ルーナとアリスがソファの魅力にやられそうになっていたり、カレンとメリウスはすごいすごいとはしゃいでおり、ラミュエールはそれを俺の隣で微笑ましい瞳で見つめている。


「どうですか?」


「凄いなこれ……海もこんなに広く――――ん?」


 あれ、なんかあそこ発光した?


「?どうかされました?」


 俺と同じように窓を覗くラミュエール。だがしかし、既に光はなかった。なんだあれ。太陽の光で反射した……とかの光ではないな。


「……いや、これカーテン着いてないけど外から見えんのかなって 」


「いえ、それは大丈夫なようですよ。外からはただの壁のように見えますから」


「へぇ。そういう素材でもあるのか……」


 と、咄嗟に別の話題にして誤魔化す。無駄な不安を抱かせる訳にはいかないしな。


「はい……ですので、私をこの窓に押し付けるプレイもすることが出来ますよ」


「あほたれ。聖女がそんなこと言うな」


「あう……本気ですのに」


 額にペコンとデコピンをかますと、頬をプクーと膨らませるラミュエール。いきなりそんなこと言い出すのが悪い。


「ほら、これから遊ぶんだろ?荷物出すから整理しとけ」


「ティルファ様、押されなくても大丈夫ですよ」


 ラミュエールの背中を押しながら、俺はチラリと後ろを向いた。


「…………」


 波の上には、誰かが立っていたような気がした。










 ザァ……と砂浜に寄せては引く波をただただボーッとしながら他の人を待つ。このヌワイでは、泊まっている部屋のクラス毎に遊べるビーチが決まっているらしく、最高級の部屋に泊まっている俺達はこの広いビーチを独占できるらしい。


 俺の今の格好は、水着と呼ばれる下着と一体何が違うのか分からない物を下に履いており、上半身にはローブを羽織っている。やっぱりこう、魔法使いのだからローブがないと落ち着かないのよね。


 しかし、レンタルしてきたこの水着と下着……本当に何が違うんだ?


 そう思いながら着ている水着をつんつん触ってみたり引っ張ったりしていると、背中に二人分の重さがのしかかってきた。


「お待たせ」


「お待たせしました、ティルファさん」


 その正体は、やはりと言うべきか予想どうりと言うべきか、ルーナとアリスだった。


「……おぉ」


「どう?似合ってる?」


「これ、ビキニって言うらしいですね。初めて着ましたけど可愛いですね」


 二人に目を向けると、それはそれはもうとても眼福な光景が目の前に広がっていた。ルーナは、赤を基調とした『びきに』とやらを着ており、アリスと比べてどことは言わないけど控えめであるが、健康的なお腹とか、魅惑の生足とか実に良い。あと、やっぱり魔法使いであるか故に、いつも羽織ってるローブを着てる。


 だが、それもいい。実にいい。


 アリスは特に何も羽織っていないため、魅力的な体がよく分かる。剣士であるから体は軽く引き締まっているが、それすらも魅力的である。水色のびきにが似合っている。


 良いな、水着。初めて見たけどこれは完全に良いな。


「きゃっ……もう、いきなりお腹を指でなぞらないで。恥ずかしいじゃない」


「ひゃっ……ティルファさん、いつもより積極的です……」


「二人が可愛いのが悪い」


 気づけば俺は、二人の手を取り隣に座らせ、両手で二人のお腹をさわさわ撫でていた。いいなこれ、なんか男の本能すっごく刺激されるぞこれ。


 二人も完全に体を俺に預け、されるがままな状態で、時折「ひゃっ」とか「んっ」とかくすぐったいのかそんな声が漏れる。


 ………来てよかったわヌワイ。これを姉さんにもできないのは非常に残念である。


「え、なんて急に遠い目………」


「恐らく、フィアン義姉様のことを考えていたのでは?」





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水着は良い文明。はっきり分かんだね。なお、作者が最後に海に行ったのは六年前とか七年前とかの話ですが、海には入らずずっと親の隣でギャルゲーやってました。

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