第7話

「………あなた、めんどいの持ってきてくれたわね。別にいいけれど」


「すいませんルーナさん」


 その後、海で目一杯楽しんだ俺達だが、昼飯を食べる時にラミュエールがこの後起きることの全てを話した。カレンとメリウスは驚いていたが、ルーナとアリスはそんなに驚いておらず、ルーナに至っては面倒くさそうな顔をしている。


「それにしても、魔神……ですか」


「悪魔とか以外にもいるのね、めんどくさいの」


「めんどくさいとかで済ませるあたり、本当に強くなったよな」


「まぁ………」


「マリア様達の訓練を受ければ……」


 俺がそう言うと、二人が一瞬で疲れた表情をした。まぁこの二人はメルジーナ様とマリア様に訓練をつけてもらってるからな。あの二人に比べたら……見たいな所はあるだろう。


「魔神……」


「不安か?」


「………」


 ポソりと呟くカレンが、コクリと頷く。


「カレンさん。怖いのなら無理して戦う必要はないんですよ……私だって、本当は怖いんですから」


 ラミュエールがカレンの手を握る。確かに注意深く見てみると、手が震えていた。


「でも、私だって先生の生徒だもん……私も頑張りたい」


「ま、心配するな。カレンとメリウスは俺が全力で守る。傷一つだって付けさせたりしない」


 主にドッグファイトするのは俺一人で充分。ぶっちゃけ魔神って奴にも負ける未来なんて見えない。勝つのは相当面倒臭いと思うけどな。


「先生………」


「大丈夫だって。俺は悪魔相手に一方的にワンサイドゲームしたんだぞ?魔神程度、ちょっと苦戦する位だろ」


「……そうですね。私も、ティルファ様が負ける未来なんて見えません」


「………確かに、よくよく考えれば確かに先生が負ける未来とか見えない」


「だろ?信じろよ、お前の先生を。だって俺は――――」


 ―――歴代最優の神童だぜ?


 ……とりあえず、メルジーナ様にも連絡飛ばしてみるか?あの人かなりバトルジャンキーな所あるから、逆に呼ばなかったらなんかされそうで怖い。


 ぶっちゃけ、俺からしたら魔神よりもメルジーナ様の方が怖いわ……。


 かっこよくカレンに言い放ったわいいけど、心の中でメルジーナ様への恐怖を膨らませていると、突如、海から強い魔力反応を検知。


「!」


 強すぎる魔力反応は、俺以外の全員も反応したようだが、俺は直ぐに右手を掲げて結界を展開する。


「うおっ」


「………」


 思ったよりも強い衝撃に声が漏れるが……耐えれない程度じゃないな。


 結界と、襲ってきた何者かの剣が拮抗しているうちに乱入者の姿を見る。それを見て思わず眉を顰めた。


「……人?」


 しかも、女の人だった。緑色の髪をしているのだが、何故か半分は黒色に侵食されている。


「………っ!あなたは!」


「吹き飛べ」


 ラミュエールが何やら知っているような反応をしたので、襲ってきた女の人を、結界を爆発させてから吹き飛ばす。


「知っているのか?」


「えぇ、私も文献に残ったいた肖像画でしか知りませんが……間違いありません!」


 爆発により砂埃が舞い、そこから何事も無かったかのように出てくる先程の人物。耐久もそこそこあるか……。


「あの人はミカエラ・ルキフグス……間違いないです!かつて魔神をその命と引き換えに封印した人物そのものです!」


「ほう。この女の名前はそんな名前なのか」


「しゃ、喋った!」


「だけど、その人って死んでるのよね?ならなんでここにいるのかしら」


 ルーナが最もな質問を呟く。確かに、命と引き換えに封印したのなら、ここにいるのはおかしい。


「なに、我が主の封印の役割をしていたこの剣からこの姿を読み取っただけさ」


「主……ということは、お前自体が魔神という訳ではないんだな」


「その通りだアテナの愛し子。いつの時代でも、奴の子は優秀だな」


「あ?」


 アテナというのは、俺達人類に魔法を授けた神でもあり、元々俺が持っているロンギヌスの元々の所有者でもある。


「名を聞かせてもらおうかアテナの愛し子よ」


「……ティルファ・ディルソフ。随分と律儀だな」


「なに、これほどの戦士と戦えるのが楽しみでな。かつてのこの女ともこのやり取りをした。もっとも、応えてはくれなかったがな」


 肩を竦めるように言う、ミカエラさんの体を乗っ取った何か。


「それでは、私も応えようか。私は大罪武器統合意識体だ」


「………名前じゃないぞそれ」


「仕方ない。名前が無いからな」


 そう言うと、大罪武器統合意識―――長い!大罪武器でいいやもう。大罪武器の背後に七つの武器が出現する。


「お前も得物を出せ。一対一でやり合おう」


「ティルファ!乗る必要は無いわよ!」


「………いや、いい。一人でやる」


 ルーナの言葉を無視して歩きだし、指をパチンと鳴らした後に背後の四人が手出しできないよう―――また、手出しされないように結界を作る。


「ティルファ!」


「大丈夫だって。俺は負けないさ―――我、神童の名に於いて、神との接続を開始する」


 いつもの詠唱をして、空から相棒の『神杖ロンギヌス』が落ちてくるのをキャッチする。


「殺りあおうか大罪武器―――俺は、お前が欲しい」


「……なんという強欲か……なら、無理やり従えて見せろ」

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