夢、微睡む

 目が覚めて、直ぐにこれが夢だと分かった。だって、俺が寝たのはベッドであって、こんな硬い地面みたいな所ではない。まぁ少しだけフサフサしているような気がするし、何やら後頭部の部分はやけに形容しがたい柔らかさである。


 ゆっくりと、視界が真っ白の光景から安定し始めるが、全体はやはりぼやけているため把握が難しい。


 ―――おや、目が覚めたかい?


 声が聞こえる。ぼやけてシルエットしか見えないが顔を俺に向け、笑ったのか何となく分かった。頭に、確かな暖かさを感じる。もしかして俺、膝枕されてるのか?


 ―――あぁ、起きなくて大丈夫だよ、私の愛し子。


 愛し子……?どういう事だ?そんなことを思っていたら、ゆっくりと俺の視界に手で蓋をされたかのように、真っ白の光景が暗くなる。


 ―――ゆっくり、目を閉じて……そう。いい子だね。


 何故だろう。俺はこの人の気配をどうしてか知っている気がする。だけど、聞いている限りではこの声の知り合いはいない。しかも、この人からは絶対に逆らえない。そんな気がする。


 ―――しばらく、私の話に付き合ってもらおうかな。この領域まで来れたのは君がハジメテだし……私も、一方的は寂しかったし。


 ……ダメだ。頭がふわふわして全然話の内容が入ってこない。領域?一方的?どういう事だ。


 ―――まずは……そうだね。近々私の差し金……とは言っても、勝手に別の神の所に割り込んで予言したんだけど、その子が君と接触するよ。やったね、嫁が増えるね。


 …………。


 ―――それに従って、まぁかなり面倒くさい物が復活とかしそうになってるけど……ま、私の愛し子なら大丈夫。ついでに、諸々と奪っちゃってもいいからね。


 ………意識が、遠く……。


 ―――あれ、もうお別れ?それはちょっと寂しいよ私の愛し子。もうちょっと頑張れないかな?


 ……ダメ、だ……もう限界……。


 ―――仕方ないか。まぁ、ここに一度引っ張り込めたということは何時でも会えるし……またね。


 声が遠くなる。最後に俺が感じたのは、額に何か柔らかいものが押し当てられた感触だった。


「…………」


 そして、目が覚めるといつもの見慣れた部屋の天井が目に映る。ゆっくりと上体を起こし、頭を手で抑えてからブルブルと勢いよく振る。


「……誰だよ。マジで」


 見たことがないあまりにも現実染みた夢。妙に柔らかかった後頭部の感触や、最後にされた額の感触などが妙に残っており、変な気持ちだ。


 隣を見ると、いつも通り俺の部屋に忍び込んでいたアリスがグースカと寝ている。寝言で「えへへ……ティルファさん……」と呟いた。可愛い。


「………はぁ」


 とりあえず、あの夢はとっとと忘れることにするか。その意思が本当に作用したかのように、俺は徐々にこの夢を忘れていくことになる。


 尚、これは対抗試合が始まる1週間と少し前の話だ。











「ティルファ……ティルファ……」


 ふんふん、と鼻歌を歌いながら上機嫌にその名を呟く女性がいる。少し薄い金髪の髪が座っているが地面に余裕で着くぐらいの長さがある。瞳の色は目を閉じているため分からない。


 その女性は色とりどりの花が咲いている場所にいた。


「流石だね、本当に。昔から私が目を付けていただけはあるけど、あそこまで私とのリンクを深く共有するなんて……」


 パチリと目を開ける。碧色の瞳が下を向き、地面を通して何かを見る。


「……私も、あなたのこと欲しくなっちゃうよ、愛し子」


うっとりと、その名前を体に浸透させるように呟いた。



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私の作品の主人公は神に愛されがち。この作品しかり、聖騎士しかり。ネクロマンサーしかり。


何故かって?私の趣味ですが?(真顔)


新作あります。こちらは別に(神に愛されては)ないです。


『【RTA】魔剣収集ルート『7:48:36』』

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