第10話
「おぉ、上手いな。いい感じに他の生徒をいけに――――じゃなくて、盾にしながら逃げ回ってる」
これでメルジーナ様は他の生徒を追わざるを得なくなるな。
「……これ、誰が教えたんです?」
「ティルファ?」
「いやいや、俺じゃねーから」
俺がやらせたことといえば、アリスと限定的な鬼ごっこさせただけだからマジで。そんな他の生徒を盾にしながら逃げることなんて教えてないから。
「メリウス……は少し考えにくいな。カレンか?」
「カレンちゃんもそんな子には見えませんが……」
「もしかして、逃げていたらたまたまとか?でもそんなことある?」
「必死に逃げてればありうるかもしれんが……あれは狙ってるだろ」
メリウスとカレンは、誰よりも早いスピードで廊下を駆け抜ける。今は目の強化をしているため、二人の挙動がバッチリと見えているが、なしだったら二人のことは残像でしか捉えられなかっただろう。
それで、駆け抜ける際にメルジーナ様の視線に他の生徒を入れるように計算して走っていたりしているため、狙ってやっていると判断した。
「さて、残り時間はあと20分で、残りは46人……まぁもう捕まっても大丈夫だな」
知識について不安な者はもうちょっと粘るだろうが、鬼ごっこで50人以内に入れたのなら、選ばれるのはほぼ確定だろう。
まぁ、二人がここで諦めるとは考えにくいが。
「はぁ……はぁ……!」
残り時間が10分を切り、既に残った生徒は10名ほどである。
ここまで残っている生徒は、元々カレンのように特待生でここへ入学した生徒だったり、経験豊富な四年生だったりと実力派が揃っているが、既にカレンは限界が見えている。
「クッ……ごめん、メリウスちゃん……!私はここま――――!」
「お疲れ様、よく頑張ったわね」
「メルジーナ様―――あっ!」
逃げていたカレンの背後に現れたメルジーナは、ここまで頑張ったカレンを労わるように撫でると、カレンの体が光に包まれ消える。捕まった生徒たちが集まる場所へと転移させられたようだ。
「カレンちゃん―――キャッ!」
一瞬カレンに気を取られたメリウスだったが、メルジーナの伸ばした手にギリギリ気づいたため、慌てて回避して足に魔力を込める。
(今は逃げる!)
「逃がさないわよ」
神童の恩恵を存分に生かし、全力で身体強化の魔法を足に込めて一気にメルジーナから距離をとるメリウスだが、メルジーナも負けていない。
制限付きなので、全力という訳では無いのだが、限られたリソースを上手く有効活用し、最低限の魔力で最効率を狙う魔力コントロールで、メリウスにピッタリとついて行くその腕は、さすがは氷の女帝である。普段からそれくらい真面目であればなぁとこれを見ていた関係者は誰しもが思った。
(ダメ!逃げきれない!)
狭い廊下を充分に生かし、たまに壁も使ったりしてすれ違うように反対方向へ移動としたが、メルジーナはそのどれもに反応して着いていく。
そしてついに――――
「はい、いらっしゃい」
「あっ………」
逃げる位置を完全に予想され、目の前に立ったメルジーナの姿を見て声を漏らしたメリウス。
既に、修正は効かな―――――
かんカンカンカンカン!
「……あら?」
「へぶっ!」
メリウスがメルジーナへ突っ込む前に、鬼ごっこの終了を知らせる鐘の音が鳴り、メリウスは光って転送されることなくメルジーナの胸に突っ込んだ。
「あらあら……どうやら終わっちゃったみたいね。貴方1人に時間かけすぎちゃった」
「む……むむぅー!!」
じたばたと暴れるメリウス。その理由は、メルジーナがメリウスのことを抱きしめたため、その豊満な胸に顔が押し付けられ、息が出来なくなったからである。
「おめでとうメリウス。40分間私に追われながら逃げ切ったのは、貴方が初めてよ?」
「む……むぅ…」
「……あら?」
そしてついに意識が飛んだ。急にぐったりとしたメリウスを慌てて支えるメルジーナ。
「……このままこの子、お持ち帰りしちゃおうかしら」
『アウトー!!ティルファくーん!お迎えおねがーい!』
「させるわけないでしょーが!!」
そして、それを見ていたフィアンがティルファへ要請をかけた瞬間、教え子の貞操のピンチにすぐさま駆けつけたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いや、ちゃうんすよ……その、サボってた訳じゃなくて……その……ゲームが楽しくて……デスエンドリクエストが楽しすぎちゃったんすよ……。
更新きちんとしたから許してクレメンス
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます