第9話

「いやだァァァァ!!」


「こ、こんな所で……!うわぁぁぁぁ!!!」


「ひぎゃぁぁぁぁ!!」


「っ!な、なんかお尻触られ―――!」


「「……………」」


 鬼ごっこ始まって一時間が経った。残り時間も一時間で現在はやく半分の生徒が捕まった。


 最初の方はどんどんどんどん捕まり、開始10分で百人が捕まったが、そこからは多少メルジーナ相手に粘る生徒も出てきたが、あっけなく確保。


 ずっと屋根上に隠れているカレンとメリウスだが、正直捕まる度に聞こえる生徒の断末魔のせいで気力をどんどんなくしていく。


 去年参加しているはずのカレンなのだが、前回は運悪く早めに捕まってしまったため、ここまでの断末魔を聞く時間はなかった。


(怖いです。メルジーナ様怖すぎです)


(てか、どうしてメルジーナ様に捕まるだけで、あんな死にそうな悲鳴出すんですか。どれだけ試合に命かけてるんですか)


 そして、更に20分ほど時間をかけ、荒方の生徒を捕まえ終えたメルジーナ。


「さて……そろそろ屋根上に隠れているイケない子を捕まえないとね」





「今、ケツ触ったな」


「触りましたね」


「触ったわね」


 おいおい、姉さんから釘刺されてたじゃん。なんで触るのよ。これで終わったあと姉さんから説教されますよ?メルジーナ様。


「………これ、ずっと思ってたんですけど、なんで生徒さんたちは捕まるとこの世の終わりみたいな声を出すんです?」


「それは私も気になる」


 アリスとルーナが聞いてくる。まぁたしかに、気になるよな。あんなに悲鳴聞いたら。今でも画面越しから「ぎゃぁぁぁ!!」って聞こえるし。


「まぁ……魔法使いにとってあの舞台に立つのは憧れだからな」


 文字通り、命をかけてると言ってもいいだろう。というか、魔法使いなのに全世界魔法学園対抗試合にあんまり興味を示さなかった俺や姉さん、ルーナがおかしいのだろう。


 まず、学園から代表として選ばれる。これだけでもう将来は勝ち組に確定したようなものであり、色んな所から声をかけられる。例えば宮廷魔導師ならないか~とか、優秀な子を残すためにうちの子と結婚してくれんか~とか。


 まぁ後、純粋に魔法が好きだからだろう。誰だって、自分が好きな分野では負けたくないものだろう?


「ん?……あ」


「どうしたの?ティル―――あ」


「これは……そろそろメリウスちゃん達のとこに行きますね」


「だな」


 メルジーナ様が、明らかに学園の屋根上を見た。きっと、屋根上を見に行くのだろう。


 俺の予想よりも10分は早かったが……まぁ、あの二人なら大丈夫だろう。


 あとは、二人の実力次第である。


「……お、2人が移動を開始したな」


 カレンとメリウスも、嫌な予感を感じ取ったのか、メルジーナ様がいる方向とは逆の方向に走り、屋根から飛んだ。そして、そのまま地面に着地するかと思いきや、空いていた窓にするりと入り校舎内へ。


「上手いな」


「あの窓、開けていたのかしら。それともたまたま?」


「どうでしょうか……」


 三人でハラハラドキドキしながら鬼ごっこの行く末を見守る。


 後半戦の開始だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る