第6話
翌日。
「MVP賞が発表された」
「え、もうですか?」
今朝起きたら、姉さんが全世界魔法学園対抗試合のMVP賞が決まったから教えに来てくれたのだが、カレンは首を傾げた。
「確かに、例年よりも発表時期も早く、しかもなんと、MVP賞のバックにはアイセーヌがいるらしい」
「アイセーヌですか?」
「知らないの?メリウスちゃん」
と、カレンがメリウスに対して説明をし始めたので、俺も資料にもう一度目を戻す。
神皇国アイセーヌ。宗教国家であり、未来を見通すという力があるアポロンという女神を崇めている国だ。
先に言っておくが、別に普通の国である。
アイセーヌには、アポロンの託宣を直接聞き取れる『聖女』という存在がいる。俺たち神童が神に愛されているのならば、聖女は殆ど神と言ってもいいくらい神聖な存在であり、お目にかかるだけでもその先一生平和で幸せな生活を送れるので、アイセーヌには、神ではなく、聖女自身を信仰している人も多い。
アイセーヌは絶対不可侵領域とされており、攻め入るのは禁止されている。それほどアイセーヌその物が神聖な場所であり、もし攻めいろうとしている国があれば、一瞬で全国が敵に回るため、あの帝国でさえも攻めいろうとはしない。
そしてさらに、聖女には『世界最高権力』というものが与えられ、女神の神託を聞き入れた時にだけ強制的に発揮出来る力があり、この瞬間だけはどこの勢力であろうとも、聖女には逆らえない。
つまりである。
ここの紙の端っこに、『異例!今回は聖女様も見学されますので、より一層の気合を入れて挑むこと』と書いてあるから、絶対にこの裏では何か面倒事が起こっているはずなのである。
「……めんどっ」
元々、めんどくさかった対抗試合が、更にめんどくさくなった瞬間である。
「それで先生、MVP賞はなんですか?」
メリウスとカレンを見ると、どちらの目もキラキラとさせている。恐らく、カレンがメリウスにどれほど豪華な景品が送られるかを話したのだろう。
「えーっと…………今回の景品はリゾート地一ヶ月旅行券だ」
「リゾート地!?」
と、カレンが大袈裟に反応した。
リゾート地と言えば……あそこか、南にある常夏の島であるヌワイか。俺にとってはリゾート地と言うよりもなんか嫌な気配がする島ということしか記憶にないが。
「先生!それってヌワイですよねヌワイ!」
「そうだな」
というか、この世界にあんまりリゾート地と呼ばれる場所はないし、人気があるのがヌワイなので、リゾート地=ヌワイみたいな感じが一般常識である。
「わ、私……行ったことないからすっごく楽しみです!」
「……そこ、そんなにいいの?」
「いいですかメリウスちゃん。まずヌワイは―――」
と、なんかカレンが熱弁しだしたので、俺もヌワイに行った時の記憶を掘り返す。確かあれは、九歳の時だったか?
父さんがでっかい仕事――――多分だが、今思えばあのクズ勇者の父親を殺す仕事―――が終わり、大金がたくさん手に入ったということから、久々にゆっくりしに行こうということで、ヌワイへ出掛け、三日ほど楽しんだ。
暑かったが、海は綺麗だったし、姉さんと水掛け合ったり、兄さんと砂で城を作ったりして楽しかったが……なーんかあそこ嫌な予感がするんだよなぁ……。
メルジーナ様に一回聞いてみたら―――
「あそこ?気味悪くて二度と行きたくないわ」
って言ってたけど、姉さんや兄さん、父さん達にも聞いたが、何も感じなかったので、めちゃくちゃ不気味な島としての印象が強い。
「……いやいや、まさかな」
まっさかそんな、ヌワイでめんどいことが起こるとか、そんなはずはないだろう。
だけど……うーん、やっぱりなんか嫌な予感がプンプンするなぁ……。それに、どうしてクラス全員分と教師の分まで用意されているのだろうか。非常に怪しいですね。
「分かったカレンちゃん。私がMVP取ってカレンちゃんにプレゼントするね」
「私も狙いに行くけど、もしもの時はよろしくね!メリウスちゃん!」
「うん、任せて」
二人は二人で、なんか決まってた。メリウスとしては、今まで世話になっているカレンにお礼として送りたいといったところか?まぁやる気があるのはいい事だ。
「さ、今日はアリスはいないから知識面の方詰めてくぞ。二人にはいらないと思うが、まぁ念の為な」
「「分かりました!」」
そして、時間は徐々に過ぎていき、一週間後。
「さて、今年はどんな素敵な才能がいるのか、楽しみね」
地獄の鬼ごっこが始まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シチー……シチー……どこにいるの?ボクはここにいるよ?何をしてるの?たくさんガチャ引いているよ?何をしてるの?(唐突なおな○話)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます