第5話

「お疲れ様、二人とも」


「も、もう無理です………」


「あ、足がプルプル……」


 アリスから逃げまくり、地面にビターンとうつ伏せになっているメリウスとカレン。アリスも少しだけ疲労の色を浮かべ、額から汗を流してはいるが、それだけで二人との明確な違いも見えている。


「ま、体力面を鍛えるというのが今後の課題かね。本番はアリスよりももっと凄いプレッシャーをかけてくるからなメルジーナ様は。それで普段よりもハイペースで魔法を使っているからガス欠も早くなり、そこを狙われる」


 どれだけのプレッシャーの中でもいつも通りの実力が出せるかどうか。それを見ているのだとメルジーナ様は言っていた。


「明日からはそこも鍛えていこうと思う。そして、目指せMVPだ!」


 MVPになれたら、何かしらの超豪華賞品が渡される今年はまだ発表されてはいないが、今回も超豪華なのは間違いないろう。去年のはどうかわからなかったけどな。勇者のところにいたから。








 神皇国アイセーヌ。その国真ん中にある神殿のとある部屋にて、重苦しい空気が流れていた。


「……聖女様、その話は本当なのですか」


「本当です。間違いなく、この世界は滅びの危機にあります」


 聖女。神の言葉を直接その身に聞き、唯一世界に絶対的な意見を下すことが出来る、世界最高権力者。


 ラミュエール。それが、今代の聖女の名前であり、神の代弁者である。


「……魔神の復活ですか。しかし、封印されているはずなのでは?」


「年々、その封印は弱まっていると神は言っていました。必ず、かの魔人は復活を果たし、世界を混乱の渦に叩き落とすと」


 ラミュエールは、碧眼を周りに向ける。この国の最高権力者達の顔には、不安の色が濃く出ている。


「しかし、神は仰いました。近いうちに、あの魔神を打ち砕く御仁が現れることを」


 ラミュエールが言った瞬間、一瞬だけ部屋が静寂になるも、直ぐに「おおおお!」と歓声が湧いた。


「そ、それは本当ですか!?」


「えぇ……『全世界魔法学園対抗試合』で答えが分かる―――そう、神は言っておりました」


「……むぅ、あのイベント行事ですか…」


「今年の開催地は確か……マベラでしたかな?」


「えぇ……申し訳ないのですが、MVP賞の賞品に対して介入いたしましょう。魔神が封印されている場所は、この世界でも有名なリゾート地の近くですから、そこへの旅行券としましょう。おのおの、全力で支援しなさい」


「かしこまりました」


 そして、それを聞いて既に行動を開始しようとした何人かが部屋を出ていく。


「あ……もうひとつ発表があったのですが……仕方ありません。後で伝えておいてください」


「はて、まだ何かあるのですか?」


「はい――――私の伴侶についてです」


 ピシリ!と空気が凍った。聖女の現在の年齢は17歳であり、その周りにいるのはその殆どが60を超えたいい歳したおっさんなので、全員が聖女の事を尊敬しながらも、孫娘のように可愛がっていた。


「どうやら、その人も神に愛されている体質らしく、その人が魔神を打ち倒す人らしいです……一体、どんな素敵の人なのでしょうか、楽しみですね」


 と、少しだけ頬を赤くしたラミュエールが笑う。聖女の伴侶は神が決める。それが掟であり、絶対。そして、その笑顔を見たおっさん達は――――


「「「な、なにぃぃぃぃ!!!」」」


 発狂した。


「聖女様の伴侶だと!?認めんぞ!仮に神と聖女様が認めようと、儂が絶対に認めん!」


「誰じゃ!一体誰じゃ!その人物は!」


「探し出してミンチにしてやる……っ!今こそ権力の生かしどころよ!」


「…………皆さん?」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

………なんだよ。笑えよ!「プーくすくす。60連したのにゴールドシチーはおろか星三一体も当たらないの?プーくすくす」って笑えよ!

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