第4話
(ティルファさんはメリウスさんを最初に捕まえろと言いましたけどこれ……意外と難しいですね)
訓練場全体を使い、縦横無尽に移動するメリウスとカレン。特に、メリウスは神童の恩恵をこれでもかという程に使い、アリスの予測から外れるように跳ね回る。
時折、魔法を使いながらもアリスを一瞬だけ騙せているのもいい動きができているということだろう。
だがしかし、所詮まだまだゴリ押しというのが目立つ。その程度ならば―――――
「!そこです!」
「え!?」
―――アリスの足でも、十分に追いつける。
限定的になら、音さえも置き去りにできるほどのスピードを見せたアリスは、逃げるメリウスの頭を封じるように表れ、そのまま突進してきたメリウスの体を受け止め、抱きしめた。
「メリウスさん、確保です」
「………むぅ」
「……思っているよりも酷くはないな」
「そうだね。私たちの時みたいなクソガキ感―――ごめん、なんでもない」
姉さんがまたもやうっかり黒歴史を披露しそうになったが、寸前でやめた。
俺たちは先程から、ここの観客席で、魔法を使って先ほどの様子を見ていたのだが、あんまり酷くはなかったというのが共通の認識だ。
神童の才能に頼りきっている『調子こ期』に入っていることは確かなのだが、それでも少しは工夫をしようという意思は感じるし、なによりクソガキ感―――ごめ、やっぱなんでもない。
ともかく、人によってこの調子こ期の症状は大小様々だが、メリウスのこれは他の神童よりも圧倒的に小さい。
「これなら、別にバッキバキに心折らなくても大丈夫そうだな。自分でも立ち直れるし、捕まった時に頬を膨らませていたから、向上心も残っている………傍観だけで良さそうだな」
本来なら、負けて落ち込んでいるところを「神童の才能だけでは上手くいかない」ということを教えるつもりだったが、あの子なら自分でこのことに気づきそうだな。
それはきっと、神童としてではなく、普通の人として暫く生きていたからこそ分かることなんだろうな。
その二分後、カレンが捕まり、訓練一回目は終了した。
「二人合わせて4分……まぁ最初にしては粘った方だな」
「あ、アリス先生早すぎなんですけど……本当にこれで八割ですか……?」
アリスに捕まり、久しぶりに魔力が『減っている』と感じ、疲労で動けなくなってアリスに連れてこられたカレンが、地面にうつ伏せになりながら言った。
そんなカレンの体を仰向けにして、俺は言う。
「いや……あれ多分、ほとんど九割くらい出てたぞ」
「ですよねぇ!?最初はなんとか対応できるくらいだったのに、急に対応できなくなりましたもん!?」
「あはは………ごめんね?その、カレンちゃんが思ったよりも強かったからつい……」
「こら」
「あいたっ」
ペちっとアリスの頭を軽くチョップ。ついじゃないよ君。それじゃこの子達の訓練にならんでしょーが。だからカレンも俺の予想を上回る魔力を消費してこんな地面に寝転んでるんだから。彼女、一応貴族のお嬢様だからね?
「まだやるか?」
「や、やります………っ!このまま終わってられないです!」
「そうか、メリウスはどうする?」
「私もやります!カレンちゃんには負けられないですから!」
と、目の奥に炎が見えたような気がした。どうやら、さっき捕まったのが相当悔しかったようだ。
これは、本当に俺なんもする必要ないな。
「分かった。それじゃあメリウス。ちょっとこっちおいで」
首を傾げながらやってくるメリウスの頭に手を置き、うつ伏せになっているカレンの頭にも手を置いた。
そして、その手をつたい、カレンとメリウスの体の中に先程失った魔力を補填するかのように、体を満たし、少しだけ光を放つ。
「こ、れは……」
「すごい……疲労が一気に無くなって……」
二人の体から光がなくなり、メリウスは手をグーパーさせ、カレンは立ち上がった。
「『魔力譲渡』。俺が使える神童としての能力だ」
その名の通り、他人に魔力を分け与える能力だ。神童のメリウスには必要ないかと思ったが、カレンにだけやっても「ずるいです!」みたいな感じになりそうだったからメリウスにもやった。
「何回でもチャレンジしよう。二人が諦めない限り、こうやって支援する」
「……!ありがとうございます!先生!」
「おう、頑張れよ二人とも」
結局、二人の訓練はこの後二時間に及ぶほど続き、最後の一回だけ、アリスから30分間逃げ切ることに成功したのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
へー……ガチャ更新はゴールドシチーか、ふーん………。
引こうかな(勝負服を見ながら)。なんだかんだ今までカフェとアヤべさんとエイシン待ちだったけど、普通にゴールドシチーも好きだし。めっちゃ綺麗だよね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます