第11話
「カレン!」
「っ」
兄さんの威圧にやられ、硬直してしまったカレンに声をかける。まぁ無理もない。あのモードの兄さんって怖いもんな。うん。
「お前は何も考えないで、魔法を撃てばいい!兄さんに一撃当てるだけを考えろ!」
「っ、はい!」
兄さんの戦闘スタイルは、『
そして、思う。兄さんが神童だったら、あれはどんな化け物になっていたのか。
「……へぇ、魔法陣の同時展開」
カレンの背後に二つと、兄さんの足元に一つ。しかも、どれもが均一に魔力が振り分けられており、ムラも感じない。
「うーん……」
あの子、どうして特例クラスにいないの?技術だけだったら既に世界の上位とでも言っていいんだけど。
特に、魔法陣の同時展開なんて、取得している人は少ない。しかも、それが三つとかどれほどな努力しているのよ。
後で、姉さんに掛け合ってみるか。
そして五分後…………。
「も、もう無理です……」
「まぁ、最初にしたら粘った方だな」
へろへろ~と地面にペタンと座り込んだカレン。肩で激しく息をしており、枯渇一歩手前の所まで魔力を捻り出したな。
「おつかれさん、カレン」
「せ、先生~」
本当に疲れたのか、なにかにしがみついていないと直ぐに倒れそうになるので、背中を支えてやる。
「ほら、これ飲め」
「はぁい」
と、俺が懐だした紫色の液体を渡そうとするが、手が震えていて、満足に飲めそうにないので、俺が飲ませることに。
「口開けて、少し上向け」
「………」
カレンは、目を閉じて小さな口を開けて上を向いたところに、ゆっくりと手に持っているガラス瓶を傾ける。
これは、魔力ポーションといい、飲めば魔力の回復速度が早くなるという、まぁどこにでも売っているやつなのだが、品質としては最上級なので、味よし回復速度よしな一品である。
見た目は、とても美味しそうには見えないのだが、何故かフルーツジュースの味がする。
「んくっ……こくっ……はぁ、生きてるって感じがします……」
一気に瓶の中身を飲み干したカレン。早速ポーションの効果が現れたのか、先程まで喋るのも限界って感じだったのだが、だいぶ良くなった。
「いやはや、なかなかの逸材ですねティルファ」
「そうだね。俺も再認識したよ」
「あ、ルドルフさ―――ん!?」
カレンが、兄さんを見て驚く。まぁそうだよな。驚くよなぁこれを見ると。
「お疲れ様でした、カレンさん。お強かったですよ」
「せ、先生!?だっだだっだっだ誰ですかこの人!?」
「ルドルフですよ、カレンさん」
「嘘!?」
兄さんは、魔法を使う時だけ口調も荒くなるし、目つきも酷くなるしで怖いのだが、それ以外の時は普段眼鏡をかけてて、こんな風に物腰も柔らかくて、口調も丁寧だ。
そりゃ、全く別人だと思うよな。これ見ると。
「ど、どうなってんですかこれ!?」
「簡単だよ。兄さんは戦闘の時だけあの状態になる」
「この眼鏡で暗示をかけてまして。戦闘は、あれくらいはっちゃけないとヤバいですからね」
「はっちゃけ!?」
「ところで、眼鏡をかけたってことは、俺とはいいの?」
「えぇ、カレンさんで少々消費しまして、やるなら万全な状態でやっておきたいですし」
ほほう。兄さんが少しとはいえ消耗するなんて、やっぱ流石だな。これは本気で姉さんにカレンの特例クラス行きを打診するしかないな。
「それでは、私はここで失礼します。カレンさんも、弱点が嫌でもわかったと思うので、そこを克服するように」
「は、はい!」
そして、一礼して去っていく兄さん。多分、明日は兄さんと存分にやることになるから、今日のお礼として、たくさんボコボコにしてあげよう。
「あ、あの……先生?」
「ん?」
「いえ、別に私は全然嫌じゃないんですし、そのばっちこいなんですけど……この体勢、そろそろ恥ずかしくて………」
「ん?……あぁ、悪ぃ」
支えるためとはいえ、肩に手を回すのはまぁやばいよな。
と、俺は手を離そうとしたが、そういえばと思い出す。さっき、カレンはメリウスとの扱いの差はなんだと言っていたな。
「カレン」
「は、はい?」
「お前、もう立てるか?」
「………………」
カレンがダラダラと汗をかきはじめる。
「そうか、まだなんだな」
「い、嫌ですよ!流石にまた脇に抱えられて運ばれるのは乙女としての―――――ふぇ?」
よいしょっと。お、カレンも軽いな。本当にちゃんと飯食べてる?
不服、ということなので、カレンもいつぞやのメリウスと同じように抱き抱えてあげる。
「え……あの……先生?」
「なんだ?お望みだったんだろ?」
今日は、兄さん相手に頑張ってたし、ご褒美ということで。
「あ、あうあうあう………」
さて……ルーナ達に見つかったらなんて言い訳しようかなぁ……。
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第一回うまぴょい会議にて、ウマ娘で開いている私のサークル『うまぴょいから逃げる(な)』では、ログインしてない状態から30日経過したら脱退させるということにしました。
まだ入りたいと思っているそこのあなた!まだチャンスはあるかもしれません!いや、本当に入りたいと思ってくれてありがとうございます!
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