第10話

 食堂まで連れてこられた俺は、結局アリスが用意してくれた飯を全部食べさせてもらったので、めちゃくちゃ時間がかかってしまった。でも、アリスも幸せそうだったからよしとする。


 幸せ気分のまま、部屋に戻る。そこでアリスと今日はお別れかと思ったのだが、アリスはそのまま俺の部屋に入ってきた。


「………アリス?」


「……ティルファさん!」


「うおっ!」


 そして、アリスはそのまま俺に抱きついてきて、勢いに負けた俺はそのままベッドに腰掛けた。


「お、おいアリス一体どうし――――」


「――――ん」


 言葉の途中で唇を塞がれる。そのままぐっ、と体重を乗せられ俺はアリスに押し倒された。


「……今日は、ルーナさんに譲ってもらいました」


「……譲ってもらった?」


 唇を離したアリスの口から、不思議な単語が発せられた。


「はい。ジャンケンで勝ったので、ルーナさんには我慢をしてもらいました」


「じゃんけん……」


 いや、まぁ下手に言い争いになった、険悪な雰囲気なるよりかは何百倍もマシだな。しかし、じゃんけんか………。


「だから、今日は私だけを――――」











「せんせー!おはようございます!」


「……お前、起きるの早くない?」


 魔力反応で、カレンが急スピードでこの部屋に向かってくるのを知っていたため、隣で寝ていたアリスは転移させてある。なんなら俺も、ついさっき服を着たばっかりなので、あと少しカレンが来るのが早かったら、なんも嬉しくない俺の裸をカレンに見せることになっていた。


「いえ、私はいつもこの時間帯に起きてますので!」


「朝から元気なことで」


 とりあえず、俺の部屋だから良かったものの、廊下で大声出すなよ?まだ殆どの人が寝てるんだから、この時間帯起きている人なんて俺とお前と――――


「キャッ!?」


 ペチン。


 ――――ま、朝練中の兄さんだよな。


 窓際に立っていた俺を狙い撃つ火の魔法。威力はだいぶ軽減されていたが、それでも隣にいたカレンが思わず目を瞑ってしまうほどの威力。


 ディルクロッド家長男のルドルフ兄さんが挑発的に指をクイクイっと曲げた。


 ふむ……なるほどな。


「カレン」


「び、びっくりしたぁ……急にまほ――――あ、はい。なんですか?」


「お前、ちょっと付き合え」


「はい!?」


 そして俺は、そのままカレンの腰に手を回して、この前のように脇の方で抱えた。


「よし、行くぞ」


「待ってください先生!なんで私はこんな持ち方でメリウスちゃんはお姫様抱っこなんですか!扱いに差を感じます!」


 ツッコミどころそこかい、と思いながら、俺は窓枠を蹴って兄さんの所へ向かった。


「よいしょ、おはよう、兄さん」


「おはようティルファ……なんだ、そこの脇に抱えてる奴は」


「俺の生徒。強くなりたいって言ってたから、兄さんにぶつけようかと思って」


 肝心のカレンはぷらーんとだれており、「扱いの差が………」と呟いたいた。どんだけ気になるんだよそこ。


「ほら、カレン。俺の兄さんだ。挨拶」


「え……はい!カレン・メイルワーズっていいます!」


 脇に抱えられたまま、ビシっ!と敬礼をしたカレン。


「ハッハッハ。面白いなお前の生徒。ルドルフ・ディルソフだ。よろしくな」


「それで先生。私はどうして連れてこられたんでしょうか」


「お前は強くなりたいんだろ?」


「そう、ですけど」


 強くなるためには、反復練習ももちろん大事だが、一番成長するためには実践で魔法をドンパチ撃ち合う方が効率がいいし、なにより兄さんは神童を除けばこの世界でもトップクラスの魔法使いだ。


「これも、俺の指導の一部だと思え。格上相手に、今の自分かどれだけ通用するか見てもらえ。……というわけ兄さん。俺とやる前に、カレンとお願いします」


「任せな。強くなりたいやつは大歓迎だ」


 ギロリ、と兄さんの視線がカレンを貫く。それにビクッ!と反応したカレン。


「……わ、私。死なないですよね……?」


「安心しろ。俺が防御結界張ってやるから、お前は思う存分、今の実力を兄さんにぶつけろ」


 俺は、脇に抱えたカレンを下ろし、結界を付けておいた。


「カレンとか言ったか」


「はい!」


「俺は神童じゃねぇが、書く上相手のティルファと昔は毎日こうして魔法をぶつけ合っていたんだ」


「は、はぁ……?」


 なんか語り出した兄さんに、首を傾げるカレン。


「かかってきなカレン」


「っ!」


 途端、兄さんの体から魔力が溢れ出した。


「俺が、お前のぶち当たるべき壁となってやる」


「っ!吹き荒れる風サイクロン!」


 へぇ、無詠唱魔法か。さすがは特待生と言うべきなのか、メイルワーズのご令嬢と言うべきなのか、その歳にしては威力もスピードも申し分ない。


 だが――――


「はっ!しゃらくせぇ!」


 兄さんは、自分の得意魔法だったら、魔法の名前なんて言わないで魔法を発動できる。兄さんは、自分の腕を炎に纏わせ、地面を殴るとその余波でカレンの魔法をぶち破った。


「ええええ!?」


 まぁ、うん、あれを初見でやられるとビックリするよな……俺もびっくりしたし。


「さぁ、こいよ青二才」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

うーん……グランアレグリア、徹底マークされてましたねぇ……最後の直線は流石でしたけど……。まぁとりあえず、おめでとう!ダノンキングリー!安田記念見ながらルドルフ育成してたけだ、評価はBプラスだったよ!


新作の方もよろしくお願いします。

『キミは、世界で一番すごい英雄さん』

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