第6話
「ヒッ!?」
俺の後ろにいるカレンが、あまりのオーラに悲鳴をあげた。分かるよカレン。俺も初めてマリナ様のあのオーラを見た時は気絶したしな……。
いやいやいや、何ちょっと前の事思い出してるの俺。とりあえず、今は目の前にいるルーナを何とかするのが一番大事なんだから。
そう!これは別にやましいことでは無いのだ。だから落ち着いて、俺はルーナの機嫌を戻せばいいだけなのだ。
「ルーナ、これは違うんだ」
「ふーん?」
ルーナが顎で続きをどうぞとでも言わんばかりの雰囲気を出してきた。なんかこれ、ほかの女にうつつを抜かしてた旦那を責める嫁の図みたいだな。
「これは、姉さんからの指示なんだ」
「義姉さんから?」
「あぁ」
そして俺は、ルーナに今日のことを話した。話しているうちに、先程のようなどす黒いオーラは消え、ふんふんと真剣に聞いてくれた。
「―――それで、ルーナは誰かに狙われているから、一番安全なディルソフ家で守るということになったんだ。メリウスは王女だからな、何かあったら学園の信用問題にも関わる」
「なるほどね」
と、ルーナは一つ頷くとメリウスへと視線を向ける。先程のどす黒オーラがまだ記憶に残っていたのか、ビクン!と大袈裟に反応した。
いつもだったら、この反応をした時点でメリウスの魔法は暴発し、勝手に魔法が発動されるのだが、俺が近くにいるためそんなことを起きていない。
ルーナは、スタスタとメリウスの傍まで行き、少しだけ膝を曲げてメリウスと視線を合わせる。
「さっきは怖がらせてごめんなさいね。私達の旦那様が早速新しい女の子でも引っ掛けてきちゃったのかと思って」
「い、いえ!別にそんなに――――え?旦那様……?」
「私……達?」
隣にいたカレンとメリウスの視線が突き刺さるのを感じた。それに対する俺の返答は、顔を天井へと向け、片手で顔を隠すことだった。
「私、ティルファの第二夫人、ルーナ・ディルソフって言うの。よろしくね」
その言葉を聞いた二人が固まった。そして、ここでもいち早く復帰したのは順応力の塊であるカレンだった。
「え!?先生って結婚してたんですか!?しかもだ、だだだだ第二夫人ってことはハーレムですか!?」
「こらこら」
そんな年頃な女の子がハーレムなんて言うんじゃありません。やってくれたな、という念を込めた目をルーナへ送ると、勘違いさせた仕返し、という念がこもったルーナの視線が返ってきて、更には舌をチロりと出してきた。
………ったく。仕方ねぇな。まぁ勘違いさせた俺が悪いしな。
ルーナの可愛さに、呆気なく先程の仕返しに関して許していると、カレンがブツブツと呟いている。
「……べ、別に貴族のハーレムは珍しくないし、私のお父様も六人くらいお嫁さんがいるから……ま、まだ大丈夫よね私。せ、先生が何人と結婚してるか知らないけど、まだまだ私にもチャンスが――――」
聞いてないぞ。俺は何も聞いてない。隣にいる他国の貴族のご令嬢がなにか不穏なことを言ってるのとか聞いてないから。
「――――で、でも……教師と生徒の恋愛なんて言語道断だし……………既成事実しか」
俺は何も聞いてないぞ!!
「メリウスちゃん!?」
ルーナの声が響いたので、急いでその方向へ目を向けると、メリウスが玄関を出て外に向かうのが見えた。
「! おい!メリウス!」
しかもあれ、自分に無意識に身体強化の魔法をかけてやがる!慌ててメリウスの魔力反応を辿るが、速度が尋常じゃない!
「ご、ごめんなさいティルファ!あの子、しばらくしたら涙が溢れ出てきちゃって……!」
「分かった。とりあえず、メリウスは俺が追う。カレンとルーナはそこで待っていてくれ!」
そして俺は、自身に身体強化を掛けて同じように玄関から飛び出てメリウスの後を追う。
既にメリウスの魔力反応は記憶済み。別に追えないこともないが、メリウスはなりふり構わず逃げているので、差が一行に縮まらないどころか、少しずつ離される。
「……!」
ならば、こちらもさらにギアを一つ上げて加速。身体強化も全体ではなく、足に集中させさらに加速。
あいつ……!狙われてるっていう自覚あんのか!
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かねてより好きな作品が、コロナせいで連載中止になり、完結になりました。
許さん。マジで許さんからなコロナ。まず、あれほど面白いのが未だに書籍化してないっていうのがおかしいのよ。
なので、もしこの作品を見ている編集者さんがいらっしゃいましたら、是非その人をスカウトしてください。お願いしますマジで。レビュー書いていますので、是非皆さんも読みましょう。『ス』から始まってます。
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