第7話

 先生と、初めて会ったのは、私が急に開いたドアの音にびっくりして魔法が暴発してしまった時でした。


「あっ……!」


 びっくりする。ただこれだけで、魔法が勝手に私をびっくりさせた対象に向かって魔法が飛んでいく。前は、これで一人の教師を黒焦げにしてしまった。


 でも、ここに入ってきた人は私の魔法を無傷でやり過ごしてしまいました。


「神童、か……」


 ポツリと呟いたその単語に、体が無意識の内に反応してしまう。そして、脳内に蘇る民からの罵声と、殺せの大合唱。


「……ぃ…ゃ…」


 バチッ!と近くで静電気がなったような音が聞こえる。大抵、この時はまた魔法が―――!


「だ、ダメっ!」


 慌てて声を出すも、魔法は既に発動され、男の人の所に。あぁ!また――――!と思った瞬間、その人が私の魔法を、まるで近くによってきた虫を叩くような感じで男の人は私の魔法を弾き飛ばしました。その光景に、思わず目をまんまるに。


「………え?」


「初めまして、キシニョフの姫君」


 呆然としている間に、その人は私の目の前まで来てわざわざ目線を合わせてくれた。


 この国では滅多に見ない、黒髪黒目ブラックパーツで――――かなりカッコイイ男の人。少しだけ、ドキッとしました。


「今日から君の担任になるティルファ・ディルソフだ。よろしくな」


 それが、私の先生――――ティルファさんとの出会いでした。


 最初は、なんて運命的だろうと思いました。私と同じ神童ということを聞いて、ようやく私を殺してくれる人が来てくれたのかと思いましたが、「死にたい」って呟いたら、頭が潰れるくらいの力でこめかみ握りつぶされますし……ドキッとした私の乙女心、返してください。


 でも、先生は本当に凄い人でした。なんやかんやで、私の本当の心の奥底に眠っていた「生きたい」という感情を引っ張り出して下さいましたし、先生は私に魔法を制御できるように教えてやるともおっしゃいました。


 これを見て、私はあの絵本とシーンが同じだと思いました。別に、絵本といっても英雄譚とかではありません。内容もありふれたものでとある国のお姫様が最終的には結婚してハッピーエンドになる構成です。


 魔法の才能に恵まれすぎていたお姫様は、魔法を制御することが出来ずに、いつも国に迷惑をかけている。


 これを読んだ時、私と同じと思っていました。そして、いつか私の元にも、このお姫様と同じように、素敵な人が現れて、私にも魔法を制御出来るようにしてくれる。そんな人が現れると。


 そして、先生は私の思っていた以上に素敵な人でした。先生の授業は分かりやすく、私なんて先生の足元にも及ばないんだなぁって。


 魔法を少し制御できた時は嬉しかった。先生もよく頑張ったなと言って下さり、頭を撫でてくれた時は胸の中がポカポカしました。


 何もかもが、私にとって初めての経験。そして、誰かに『守られる』というのも、初めてでした。


 先生はが一生懸命に私を守ってくださった時は、心臓が高鳴りました。そして、先生の真剣な横顔はとてもかっこよく、思わず頬が赤くなりました。隣にいるカレンちゃんもぼーっとした目で先生を見ていました。


 そして、私は漠然にも思ってしまったのです。絵本の姫様が、先生役の魔法使いと結婚しましたように、私も先生と結婚するのだと。


 そうなったら、なんて素敵なことなのだろうと考えてしまい、折角先生のお家にお邪魔するというのに、緊張が止まらなかった。


 なのに―――――


「うぅ………ひぐっ………」


 走っている私の目から自然と涙が出てくる。我ながらちょろいと思うが、これはもう仕方がないのだ。


 先生にお嫁さんがいると聞いた瞬間、頭の中が真っ白になって、ぐちゃぐちゃになって……気づいたら先生のお家を抜け出していた。


 先生の隣にいるあの人に、嫉妬して衝動のままに飛び出す。


 ほんとうに――――私は子供だ。


「………あっ!?」


 そして次の瞬間、私の左足に激痛が走り、地面に倒れ込みました。


「っ、痛っ……!」


 すごいスピードで走っていたため、少しだけ地面を滑りました。頬がヒリヒリと痛みます。


「………っ」


 震える腕で上半身を起こし、異常のあった左足を見ると、そこから血が溢れていました。切り傷があるので、誰かが私の足を狙ったのでしょう。


 でも、一体誰が――――


「イッツショウターイム」


「っ!!獣人……虎人族ライカンスロープ!」


「当たりだせぇ、無能な姫さんよ」


 私の目の前に音もなく現れたのは体が大きく、全体的に黄色と黒のシマシマ模様の虎人族でした。


「神童、と言ってもただただ真っ直ぐ愚直に走っているだけだったら、対処するのは簡単だ。あの邪魔な教師が居たからお前を殺せなかったが、やっと仕事を遂行できる」


「殺……っ」


 逃げなきゃ、と思ったが足が言うことを効かない。


「キャッ!」


「大人しくしとけよ無能姫。そうしないと苦しんだまま死ぬことになるぜ?」


 頬を蹴られ、無理やり仰向けにされる。痛い。


「しかし……まぁ……」


 ゾクッ!と嫌な感じが体全体に迸ります。恐る恐る視線を向けると、殺しに来た男の人の視線の質が変化していました。


「……別に、殺せば何してもいいとレオ様に言われてるからな。殺る前に一発くらいヤッといてもいいか」


「ヒッ!?」


 に、逃げないと!!逃げないと、好きでもない男に私が汚される!


 ずる、ずる、と腕を使って何とか距離をとる。でも、これで逃げれるとは到底思えな――――


「俺の生徒に何してんだゴラァァァァァァァ!!!!!」


「ぐひぁぁ!!」


「え……?」


 ………目に映ったのは、ものすごい光景でした。空から現れた先生が、かかと落としで刺客を地面にめり込ませていました。


「ようメリウス。無事か?」


「せ、先生!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近、スパクリが全然マエストロ落としてくれないの………。


最近、エアグルーヴばっかり育ててるけど、昔の俺ってどうやってAランクまであげたのん?と思いながら育成してます。

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