第5話
「さ、上がって」
「お、おおおおお邪魔しますすすすす!」
「おじゃましまーす!」
あれから、今日は特に狙われるということも無く、無事に帰宅することが出来た。
姉さんが突然「一緒に暮らしましょうね~」と言ってきた時は少しだけ驚いたが、よくよく考えれば、ぶっちゃけ学園より俺や姉さんが近くにいた方が安全だし、既に手先が潜り込んでいる以上、学園は安全ではない。
刺客については、姉さんや授業が入っていない暇な職員が一緒に探してくれるらしい。職員側に裏切りがいるかもしれないと思うかもしれないが、あの学園にキシニョフから来た先生はいないし、何よりも背後関係はしっかりと明らかになっている。
確か、俺がまだ学園の生徒だった時に、一人の教師がここにやってきたのだが、二日後には姿を見せなくなったことがあった。何でも、学園の技術を盗もうとする他国のスパイだったらしく、直ぐに強制帰国させたらしい。
と、いうこともあり、職員は全員シロ。だから協力者は必然的に学園の生徒で、キシニョフ出身の亜人となるのだが、この学園、普通に亜人の生徒多いからなぁ………。
話を戻すが、当然これから事件解決までディルソフ家に暮らすことになったのは俺が受け持つことになった唯一の生徒のメリウスと、今日出会ったばっかりの驚くべき適応力をもつカレンの御二方である。メリウスはガチガチに緊張してるのに、カレンはもう慣れたと言わんばかりの態度である。
この子、本当に慣れるのはや過ぎない?これも才能か……。
「別に、そんな緊張しないくても大丈夫だぞ?我が家とでも思え」
「そ、そんな!」
メリウスはブンブン!と手を前に突きだして「畏れ多いですぅ!」とでも言いたげな雰囲気である。
「メリウスちゃんって友達の家に行くと無駄に緊張するタイプなのね。ほら、もっと気楽でも大丈夫だよ」
「で、でも私……他人の家に上がるのは初めてで……」
「だから、自分の家みたいに思ってもいいよ」
「む、無理です!せ、先生と一つ屋根の下なんて……」
「お……?」
そういったメリウスは、両手を頬に持っていき、顔をなんか赤くさせた。んー……?
「ちょ、カレンカレン」
「はいはい」
何やら「えへへ……」となってトリップ状態になっているメリウスに気づかれないようにカレンを小声で呼んで手招きする。カレンも意図を察したのかゆっくりと、とことこやってきた。
「見て、あれ。俺まだ出会って二日目だけどさ、メリウスにあんな表情させるほどに好感度上げた覚えないけど?」
ビシっ!とメリウスを指差す。
「え……でも、メリウスちゃんがあんな態度になるのも、別におかしくないと思いますけど……」
「なんで?」
別に、俺がやってきたことは至極当然の事だぞ?
「メリウスちゃんから聞きましたけど……今まで溜めていた胸の内を優しく受け止め、自分の才能に苦しんでいたところを真剣に向き合って治そうとしたり……何よりメリウスちゃんのことを全力で守ったり」
「え?別に普通のことだろ?」
困っていたら助ける。命の危機に瀕している人がいたら、余程のやつじゃない限り助ける。基準はあのクソ勇者な。
「ブエックシュ!」
「勇者様、風邪ですか?」
「いや……なんか俺の事を噂している奴がいる気がする……誰だ?」
「メリウスちゃんにとっては、先生のその普通の行動はとても嬉しかったってことですよ!それに……私も、あの時の先生はカッコイイって思ったし……」
「ん?カッコイイ……?」
ちなみに、最後の方は小声だったが、俺バッチリと聞こえていた。
「っ!わぁぁ!!先生!先生!今のなし!今のなし!」
「ちょ、おまっ、やめ……!」
まさか、聞かれていたとは思ってもいなかったようで、カレンは真っ赤にして、俺の胸をポカポカと叩いてきた。
別に、全くもって痛くないのだが、不味い。
何がマズイのかって?これを俺の嫁ーズに見られたら、一気に勘違い路線へと一直せ――――
「ティルファ………?」
「っっっっ!!!」
ギギギギ……とゆっくり顔を声の発生源へと向ける。メリウスとカレンも気になったのか、二人も声の主へ目を向けた。
「なに、してんの………?」
「る、ルーナ……」
そこには、あの時メルジーナ様の家にいた時に、マリナ様が発していたかのようなオーラを纏っていたルーナがいた。
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『勇者に捨てられた俺はうまぴょい伝説で無双する』
なんじゃこのタイトル……。色々とツッコミどころ多すぎて芝生えるんですけど。
そもそもこんなタイトルにしたら怒られるわ!
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