第9話
「………その言葉、忘れんなよ」
「………え」
俺は、ゆっくりと手を下ろし発動していた
当然、魔法使いならば
「……なんで、か?」
俺がそう呟くと、こくこくとほとんど無意識の内に、頷く。
「それは―――自分が一番よくわかってんじゃないのか?」
「――っ!」
先程盛れた「まだ生きていたかった」というセリフは、殆ど無意識の自分の本音だったのだろう。
「で、でもっ……!」
「でもも何も無い……お前が生きたいと思った。それだけで、生きるには充分だろ」
それに、こいつは自分の親が生きて欲しくてここに寄越した事に気付いていない。親の心子知らずとはよく言ったものだ。
「それに、俺がここに来た理由は、お前のお父さんからの依頼だぞ」
「え………?」
俺がそう言うと、メリウスは目を見開かせる。
「お前のお父さんは、俺にメリウスの魔法を卒業するまでに制御させてくれっていう依頼が来ている。だから、あんまり親不孝なことをするな」
「お父……様……」
今まで我慢して我慢して……それでも、味方なんて誰一人もいなかった状態から、自身の親だけは唯一、生きることを望んでくれた。
「う……あぁ……」
色々と、限界だったのだろう。
だから、今だけは存分に泣け、メリウス。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!!」
俺は、メリウスが泣き止むまで、ずっと頭を撫で続けていた。
「……ぐす、すみません先生……」
「気にするか、この程度どうにでもなる」
メリウスが、父の本音を聞いて泣き出してから数分。途中から俺にしがみついて泣いてきたため、胸元が涙やら鼻水やらでびちゃびちゃだが、魔法で直ぐになかったことに出来る。
でもその前に、メリウスの目元にできた涙のあとやら腫れやらを先に回復魔法で無くす。いや……だってさ、この状態でメリウスを外に出してみ?変な噂たてられるぞ。
しっかりと確認しながら、腫れが治ったのを確認してから胸元の水分を無かったことに。途中、目元を確認しようとしたのだが、メリウスが何故か目線を逸らすので少し時間がかかってしまった。
「さて、とりあえずこれで一先ず一見落着なんだが………授業する?」
ぶっちゃけ、そんな空気じゃないと思う。今日は心の安定のために休みにしてもいいかなと。
魔法は、精神状態でも大きく変化するからな。メリウスがキシニョフの森を燃やせたのもそのせいだろう。精神が不安定になると、魔法の制御も不安定になる。当然のことだろう。
「……えと、大丈夫です。よろしくお願いします」
しかし、メリウスは少し悩んだが、俺にぺこりとお願いした。
「その心意気、はなまるだな」
安心しなメリウス。大体の予想は付いている。一週間で制御できるようにしてやるよ。
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知っている人もいるかと思いますが、昨日新作を投稿しています。
真面目にプロットとかもガッツリ書いて、しかも作者が一番設定を考える時に好きな現代ファンタジーです。良ければこの話を読んだ後に、サラッと移動してくれれば嬉しいです。損はさせません。
『血濡れの
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