第8話
とりあえず、俺が今ここでどーこー怒っても仕方がないから、とりあえずこいつの死にたい願望を消すために一度しっかりと話を聞くことにする。
「なんで、お前はそんなに死にたいんだ?」
「べ、別にあなたには関係ないじゃないですか。そんな今日から担任になったからって簡単に教えるわけ―――」
「それじゃお前は、目の前で死にそうになっているやつから目を背けるのか?」
俺は無理だな。悪人だったら逆にとどめを刺すかもしれんが、普通の人相手だったらまず助ける。そして、その経緯に至った理由を聞く。それが普通だと思うんだが。
「………無理、です」
「だろ?それと一緒だよ。俺がお前にとっている態度は」
メリウスは、しゅんっと顔を俯かせる。
「だからさ、聞かせろって。こうして赤の他人に聞かせている内に、何か心変わりがあるかもしれないだろ?」
「……………………」
とある森に、一人のエルフの姫が産まれました。その姫は、産まれてから数秒もせずに、『神童』という神に愛された子供の枠入りをしてしまうほどに、強力で、強大な魔力をもっており、多くの民から期待をされていました。
しかし、蓋を開けてみれば魔法の制御も上手くいかず、暴発する。下手をすれば怪我人が出てしまうほどでした。
その事を知った民は、表向きでは姫を敬愛しているものの、次第に冷たい目で彼女を見るようになり、次第に『無能』という蔑称が民の間で回るようになりました。
神童なのに、魔法を使えない。キシニョフでは、魔力を多く持っているものこそ王に相応しいという昔からの掟があるのだが、魔力はあれど、魔法は満足に使えない。キシニョフの王もこれで交代だと、誰もが思った。
キシニョフの姫は、度々聞く無能という言葉に負けずに、毎日のように魔法の訓練をしていました。絵本のように颯爽と出てくる王子様なんて居ない。そのことに早めに見切りをつけていたキシニョフの姫は、独学で魔法を制御し、民を見返してやろうと奮闘していました。
しかし、ある日のこと、いつも通り魔法の訓練をしていたキシニョフの姫に悲劇が振り落ちました。いつもキシニョフの姫の献身的なサポートをしてくれる侍女が、姫のことを『無能』と呼んでいることが発覚してしまったのです。
それを聞いてしまったキシニョフの姫は、精神が不安定なまま、いつも魔法の訓練をしている練習場に辿り着くと、大声で泣き始めました。常にギリギリだった彼女の心は、ついに決壊してしまったのです。
そして、事件は起こりました。元々暴走気味だったキシニョフの姫の魔法が、勝手に暴発してしまったのです。
その魔法は、誰もが使える火球でしたが、神童であるからか、何倍もの威力と規模で木にあたり、あっという間にその火は燃え上がりました。
キシニョフの機は耐火性に優れており、ちょっとやそっとな火では燃え広がらないとのことで有名でしたが、キシニョフの姫の魔法はそれすらも上回ってしまうのです。
火は次々と燃え上がりました。現国王の尽力と、国の民が一丸となって対処はしましたが、あと一歩遅れていたら、国や森は全焼。住処を追われ、これをチャンスと思った他国がまた亜人を捕まえるためにキシニョフへ踏み入ることになったでしょう。
そして、この犯人がキシニョフの姫とわかるや否や、これまでの民の感情は爆発し、彼女に様々なことを言いました。
『無能』『大罪人』『反逆者』『役立たず』『お前なんか死んでしまえ』
こうして、国の悪意をいっせいにその身に受けた彼女は、自分に絶望し、言われるがままにこの魔法学園にやってきたのです。
そのことを全て話したキシニョフの姫の顔には、涙が流れていました。
「そうか……」
そのことを聞いたキシニョフの姫――メリウスの前で黙っていたティルファは、ゆっくりと立ち上がると、その手をメリウスに向けました。
「
そう呟くと、バチバチっ!と音を鳴らしながら全長約2m程もある雷で出来た全てを焼き尽くす槍が出てきます。
「お前は、そんなに死にたいのか?」
「………はい」
その、はずである。とメリウスは自分に言い聞かせ、ゆっくりと目を閉じる。
「せめて、痛みがないようにお願いします……」
気が変わったのだと、メリウスは思った。自分の話を聞いて、ここで処分するべきなのだろうと。
「安心しろ……せめてもの情だ」
そして、ゆっくりとティルファは手を振りかぶります。
その光景を感じ取り、せめて……せめて最後くらいは思ってもいいだろうと、奥底に閉じ込めていた気持ちが――――
―――あぁ、まだ生きていたかったな。
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ダメだよ!生活費削ったらぁぁ!!無理のない課金で無課金なんだから、そんなことしちゃらめぇぇぇ!!
あ、タウラス杯優勝しました。オープンリーグだし、Bリーグだったけど。
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