第4話

 メルジーナ様の用事も終わったので、用事も終わったので、俺たちは今から魔法学園の方に向かう。


 魔法学園は、ディルクロッド領敷地の全体の三割を占めており、街からは少し離れた位置にある。


 生徒は基本寮に住んでおり、長期的な休みにならない限り、生徒達の実家に戻ることは出来ないが、休みの日ならば、街にまで降りてきて買い物をすることが出来る。学生時代はよく、姉さんに連れられて街まで降りてきたこともあったなぁ。懐かしい。


 生徒数は全体で約1000人程度で、入学するためには学園側が提示する条件をクリア。それだけで入学は認められる仕組みとなっている。


「………大っきいわね」


 ボソッと隣にいるルーナが呟く。アリスに至っては上を見上げて「ほえー」と行った感じで、声すらも出ていない。


 昔の記憶を頼りに、魔法学園までたどり着いた俺達。相変わらず変わってない建物にどこか懐かしさを覚えると同時に、一瞬だけ、体に倦怠感が襲いかかるがそれも直ぐになれる。


「……何か、体の調子が変だわ」


「……そうですか?私は特に何も感じませんけど」


「まぁ、魔法使いのルーナと、剣士のアリスでは感じるものが違うからな」


 そう言いながら、俺は魔法学園の門を開く。


「どういうこと?」


「この魔法学園はちょっと特殊なんだよ」


 この世界には、魔法を使うために必要とする魔力が大気に含まれており、魔力を消費したら呼吸とかで大気から魔力を吸収して回復させるのだが、この魔法学園は魔力濃度が低い。


 魔力濃度というのが、大気中にどれだけの魔力が含まれているかというの意味なのだが、例えば普通に人が暮らしている街が平均的に一である。この一が、魔力を全部使っても一日寝れば大分回復しているだろう、というのを示すものであり、勿論場所によって濃度は全く違う。


 例えば、先程メルジーナ様との話ででてきたキシニョフは魔力濃度が二もあるのだが、ここの魔法学園の魔力濃度は0.3である。


 これがどれだけ低いか、ということなのだが……そうだな、簡単に言うと、魔力の半分も使えばぶっ倒れてしまい、この土地だけの特有の魔力欠乏症という、魔力を一度に大量に使ってしまって体が動かなくなるという症状が出る。


 勿論、しばらくすれば治るのだが、問題はなぜここだけ魔力濃度がこんなにも薄いのか、ということである。


 まぁ、学園側がわざとここの魔力濃度を薄くしているだけなんですけどね。


 学園側の狙いは二つあり、きちんと魔法を制御することと、魔力量を増やすことである。


 魔法は、ただ使うだけではそれは完璧な魔法とは言えない。よく、たくさん魔力を込めれば威力は強くなるとか馬鹿なことを言う奴がいるが、それは下手くそがやる手段であり、きちんと魔法を制御すれば、少ない魔力でも威力を大きくすることが出来るのだ。


 そして、魔力を増やすということなのだが、何回も――――それこそ毎日のように魔力を限界まで使い、体がクタクタになれば、体がそれを異常に感じて、その環境に適応しようとして魔力量を増やす。これで、学園側は一番の魔法使いの悩みである二つを自身でいつの間にか解決させるような方針を取っている。


 それが出来れば自信にも繋がるし、ここから出ればその魔法使いは周りから一目置かれるほどの実力者となっているだろう。


 と、言うことを姉さんがいる学園長室にまで来る間に、ルーナとアリスに喋った。剣士であるアリスは魔法について詳しくないし、使える魔法も身体強化だけなのであまりピンとは来ていないようだが、ルーナはなるほどねと呟いた。


「私に魔法を教えてくれた先生は、何をするに関しても気合いと根性があればなんでもできる!っていうタイプの人だったから違いがよく分かるわ」


「なんだその熱血教師」


 あと、魔法は気合いと根性ではどうにもならん。魔力量と魔法をきちんと制御できるようになってから出直してこい、ルーナに魔法を教えたやつ。


 ちなみに、そいつは三日で家庭教師を退職させたらしい。






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夢でマンハッタンカフェと一緒に、寄り添いながら本を読む夢を見た。


幸せ……

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