この二人、真面目に組めば多分強い

第1話

「「あ」」


 目と目が会った瞬間、脳内を色々と駆け巡った。


 そういえば、メルジーナ様にこいつの入国制限進言するの忘れてたなーとか、なんでこいつここにいるの?とか、まぁ色々。


 少なくとも、目が会った瞬間、あいつの目が多少歪んだことから、あっちはこの事態を少しは想像していたんだろう。


 忌々しく、クズの外側に自覚しているからこそ、それを覆い隠す模範となるべき勇者の皮。王族や住民の信頼を得ているからこそ、大多数は向こう側に味方が着いてしまう厄介な相手。


 とりあえず、今とるべき俺の最も最適だと思える行動は―――――


「よし、あっちは人がいるから一旦後回しにして、別のところを見回りに行こうか」


「え!?」


 無視することだった。多分だが、ルーナもあいつの事を見て色々と思ったのだろう。一応、ここに来る途中の馬車内で復讐はしないだろうとは言ったが。


「いいかルーナ」


 俺は、ルーナと向き合って彼女の両肩にポンッ、の手を置いた。


「俺たちは何も見ていない。外面だけがいい金髪ファッキン勇者なんて見ていない。いいな?」


「え?え?」


 と、困惑するルーナをそのままくるりと回転させてそのまま背中を押して早足で去っていく。接点を持たず、持たせず、持ち込ませずだ。これ大事だから。


「ちょ、ちょっとティルファ!大丈夫なの?」


 顔だけこちらに向けて、不安の残る顔でルーナは言う。


「大丈夫だって。こんな人目があるところであいつは手を出してこないだろうし、出てきたとしても、ルーナのことは俺が全力で守るから安心しろって」


 例え勇者だろうが、ルーナに手を出そうものなら殺す。誰にもバレないようにしっかりと………な。


 ルーナの背中を押しつつ、勇者の気配を魔力で探知。どうやら俺らの後を追いたいらしいが、人が多くて上手く動けていないらしい。


 というか、なぜあいつは俺らの後を追おうとしているんだ。奴からしたら俺らは人前で地面に這いつくばらせたヤツらだぞ。わざわざ会おうとは思わんだろ。


「…………っっっ!!!!」


「キャッ!?」


 途端、うなじにビリリ!と嫌な予感が流れたので、ルーナの体を抱きしめてから体に一瞬にして強化魔法をかけてから跳躍。次の瞬間、先程まで俺たちがいた所は飛んできた紫色の炎によって地面がえぐれてしまった。


「これって!」


「襲撃だ!全員!!直ちに避難しろ!!」


 ディルクロッド一帯には、既に最近不穏な動きがある警戒するようにという注意喚起がされているので、慌てた住民たちはすぐさま家に入ると、防御結界を発動させた。


 何かあった時ように、メルジーナ様が作った家に一つ支給されている簡易防御結界。スイッチひとつで誰でも強力な結界ができるので、非常にすごい発明品である。壊されない限り何度でも使用可能。


 しかし、俺がギリギリまで発動を感知できない魔法か……。


「悪魔か」


「ご明察。さすがは今世代最強の神童と言われているお方でありますね」


 俺がとある家の屋根に目を向けると、そこにはマントで体全体を覆い、顔を仮面で隠しているいかにもな奴がいた。


 体長はおよそ2メートルと以外とでかいな。しかし、どことなく残念臭が漂っているのは気のせいか?


「へぇ、勝手なイメージだったが悪魔ってのはもっと野性的で会話が出来ないものかと思ってたぜ、ラプラスの悪魔さんよ」


「残念ですが私は悪魔ではありませんので……それにしても、私が契約した悪夢の名前さえもお分かりになるとは……」


 と、こいつ。何故か顎に手を置いて頷いているが……バカなのか?自分から情報を言うなんて。やっぱり残念臭は気のせいではなかったか。


「ということは、先日の刺客もお前が原因か、ウルゴス」


「えぇ、ご想像通り、私が差し向けました。私の目標を達成するのに必要なものでしたので」


 ふーん………そうなのか。ま、それは別にいいんだけどさ………。


 あいつ、やっぱバカじゃねぇの?だってあいつ、多分あの勇者にもちょっかいかけてるんだろ?


 それならさ――――――


「―――アスカロン」


 ―――あいつが呑気に喋っている敵の背中、狙わないわけないじゃん。


 ウルゴスの背中越しに聖剣の煌めきが見える。どうやら最初からエンジンは全開のようだ。


「ルーナ」


「なに?」


「大変不本意だが、俺は今からあいつの手助けをする。だから、ルーナはアリスたちを呼んできてくれ」


 多分、ルーナは今の俺たちの次元について来れない。いくら指輪で強化されているとはいえ、今のあいつは不意打ちまがいで地面に這いつくばらせた時よりも何倍も強い。


「……悔しいけど、呼んでくるわね……死なないで」


「バカ、誰にものを言っている」


 ルーナの頭をフード越しに撫で、俺は体中から魔力を噴出させる。


「よぉクソ商人。ここであったが100日目だなぁ!!」


「な、何故ここにお前が――――」


「お前の後を追ってきたからに決まってんだろうが。とっとと死に晒せぇぇぇ!!」


神をも縛る鎖エルキドゥ!」


 何があったかは知らんが、存分にあいつの怒りを買っているウルゴスの一瞬のスキをついて、奴を拘束。


 そして、俺とあいつの最初で最後であろう協力戦が始まるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガチャを130回引いても新衣装マックイーンが来なかった作者のあとがきコーナー!!


ついにウマ娘が好きすぎで二次創作を書いてしまった。反省も後悔もしていない。読みたい方は頑張って探してみてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る