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自分が治してやるはずだったのに、小春はもう手術を受けるという。


政宗が医師免許を取得し立派な医師になるまで、まだ何年もかかる。それまで待ってくれなどというのはエゴにしか過ぎない。


病は待ってはくれないのだ。


そんなこと、政宗だってわかっている。

わかってはいるが、いざ現実を突きつけられると悔しくてたまらなかった。


医師への道程はまだ遠い。

だが小春は手術を受ける。

それは喜ばしいことじゃないか。


頭ではわかっている。

じゅうぶん理解している。

けれど、気持ちがついていかない


自分は何のために医師になるのだろう。


「……何のために?」


政宗は空を仰いだ。

穏やかに流れる雲も爽やかに吹く風も、政宗の心の中で吹き荒れる嵐には勝てなかった。

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