9

予想外に思い詰めた顔をする優也が心配になり、政宗は声のトーンを落とす。


「小春に何かあるのか?」


優也は少し考えたのち、初めて政宗に小春の体のことを告げた。


「ずっと言ってなかったけど、小春はさ、先天性の心臓病なんだ。普通の生活ができる程度ではあるけど、それでも運動は禁止なんだよ。」


「……え?心臓病?」


政宗の脳裏に小春との思い出が浮かぶ。

いつも優也と一緒にいて、横でニコニコ笑っていて、小学生らしくたまに生意気を言う。優也と小春は六歳と少し年が離れているため、それで優也が甲斐甲斐しく面倒を見ているだけだと思っていた。


「全然気付かなかった。」


「そりゃ、な。見た目は普通だし。でも、いつ何がきっかけで発作が起きるとも限らない。もしかしたら長く生きられないかもしれないって言われたら、やっぱり心配になるだろ?」


確かに言われてみれば、優也と遊ぶときは常に小春が一緒にいたし、外で遊ぶことはなかった。もともとインドア派な政宗はそれを疑問に思うこともなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る