魔王vs勇者+聖騎士長
「ふんっ! 俺に対して碌な攻撃が出来ん勇者ともう一人来たところで負ける気はせんな」
「どうだろうねぇ」
勇者と対峙している魔王はかなり余裕のようだが、それ以上に勇者が余裕そうだな。魔王の言う通り攻撃が当たっても大して影響が出ていないようだけど、それは何でだ? いや、そもそも何で勇者は何時ものように攻撃していないんだろうか。
魔王が放つ魔法を勇者は何度も打ち消している。しかし、勇者の攻撃も魔王にダメージを与えている感じは無い。それにいつもだったらもっと鋭い攻撃を繰り出していたはずの勇者が、魔法を打ち消す以外に剣を使っていないのが気になる。
「はっ!」
そこにシアが割り込む形で攻撃をする。
「は、勇者でもないのに割り込んで来るとは、身の程知らずぐっ!?」
シアの剣が魔王に当り、魔王の体がよろめく。それは今まで勇者の攻撃でも怯むこともなく受けていた魔王が、シアの攻撃で明確にダメージを負ったことを示していた。
「なぜ!?」
「はっ、私の聖剣はどうかしら? まあ、見ればわかるけど」
「聖剣だと!? 何故聖騎士ごときがそれを持っている?」
まあ、その疑問尤もだよな。そもそも何で勇者が普通の剣を使っているんだよって話しではあるのだが。
聖騎士は、基本的に聖女の護衛を担当している騎士のことを言う。そのため、騎士の中でも優秀な人材が選ばれているのだが、それでも聖剣を与えられるのはおかしいことだ。それに聖剣ともなれば国宝級の武器になるだろうからな。
「え? 隊長の剣って聖剣だったのですか!?」
「え? なんで?」
おい。隊の長の武器のことくらい把握しているよ。それに半年間、一緒に旅をしていた仲間だろう? 何で知らないんだよ。
「ちっ!」
魔王が舌打ちをしながらシアから距離を取る。と言うか、王子の体であの動きを出来るとはさすが魔王だな。王子って確か80キロくらい体重が有ったんだが、見た目が変わっていないのに後ろに飛び引いて数メートルも移動できるとかすごいな。
「お? 逃げるのかな?」
「そんな訳なかろう! こうするためだ!!」
勇者の煽りに魔王はそう言うと手を前に掲げ、俺が最初に見たものよりも数段大きな魔法を形成し始めた。
しかし、勇者とシアはそれを見ても慌てることは無く冷静にその光景を静観している。
「これなら、お前らの剣でも完全に斬ることは出来まい。それに斬れたところで周囲に拡散することになる故、後ろに居る者たちがどうなるかも想像に難しくはないな」
なんか自分に攻撃が通るようになった瞬間、後ろに居た俺らを人質みたいに扱い始めたぞ、この魔王。それにちょっと安易すぎないか?
「後ろに通すつもりはないよ」
「同意だ」
魔王が切れば俺らに当たるぞ、と言う脅しをしても2人は動じることもなく、魔王と対峙している。
とは言え、シアに関しては勇者と魔王の間に入った時からこちらの様子を時折窺っているのは分かっていたので、それが若干強まった感じではあるな。勇者はよくわからないけど。
「はあっ!」
そして魔王は目の前に出していた魔法を勇者とシアが居る方へ向かって放つ。その魔法は真直ぐ勇者、ではなくシアへと向かって行く。
魔王的には勇者よりも確実にダメージを与えて来るシアの方が脅威だと判断して、先に殺そうとしているのだろう。それに勇者とは違いシアはここまで魔王の魔法攻撃を受け流していただけなので、勇者のように魔法を消す力は無いと思ったのだろう。
「まさか私だけを狙って来るとは」
「それはさすがに受け流せまい? いくら聖剣を持とうとも、無理に斬ろうとすれば後ろに居る者たちも無事では済まなかろうよ」
魔王は、これで確実に自分に対してダメージを与えて来る相手を倒したと確信して鋭い笑みを浮かべた。
「ちっ」
そしてシアはその魔法を受け流すことも斬ることもなくその身で魔法を受け止め、魔王の魔法がシアの周囲もろとも包み込んだ。
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