第2話

「おはようございます神谷くん。昨日はありがとうございました」


 次の日、何事もなかったかのように挨拶をしてきた篠崎さん。澄ました顔をしている彼女だが昨日は俺の匂いでかなり乱れていた。

 その事を知っているのが俺だけだというのがたまらなく嬉しい。朝から気分は爆上がりだ。


「おはよう篠崎さん。今日も朝から綺麗だね。ハーフアップだっけ?すごく似合ってるよ」

「っ!あ、ありがとうございます///その……神谷くんはいつもの髪型とどちらの方が好きですか?///」

「俺はストレートの方が好きかな。清楚な感じがして篠崎さんによく似合ってる」


やはり篠崎さんには王道のストレートがよく似合う。ハーフアップも可愛いけどストレートには敵わない。まぁ結論どんな髪型でも可愛いんだけど。


「そ、そうですか///…照…ま……もぅ……///」


 篠崎さんは俺に背を向け何かを呟く。相変わらず一挙手一投足が可愛いことで。

 両想いだと発覚してから篠崎さんの何もかもがさらに愛おしく見えて仕方がない。


 そういえばあの後俺はいなくなったから分からないけど今朝机の上に丁寧に畳んで置いてあったコートには篠崎さんの匂いがかなり付いていた。どれだけ長い時間着てたんだろう?


「あの後どのくらい仕事してたの?」

「…18時半頃ですかね。神谷くんのコートが無かったら大変でした。本当にありがとうございました」


 俺が行ったのが17時過ぎだから……1時間半!?嗅ぎすぎだろ!


「…そっか。なら良かったよ……体壊しちゃうから程々にね」


内心の動揺を悟られないように表情を取り繕う。


「はい。心配してくださりありがとうございます」

「どういたしまして……あっ篠崎さん、人来てるよ。じゃあね」

「……はい。それでは」


 篠崎さんの取り巻きの女子がこちらに歩いてきていたので、篠崎さんとの話を打ち切る。

 篠崎さんは悲しそうな顔を一瞬したがすぐにいつも通りの表情になって離れていく。

 その後ろ姿を眺めていると突然背中を叩かれて挨拶をされた。


「よっす蒼太。お前も隅に置けないな。まさかあの高嶺の花、篠崎紅愛を射止めるなんて」

「……射止めてなんかねぇよ」


こいつに嘘をつくのは憚られたがまだこの事実は俺だけのものにしておきたいので嘘をつく。

 こいつは幼馴染みの守屋雅紀もりやまさき。ハイスペックイケメンだ。しかし彼女はいない。いや正確には三次元にはいない。


「そうか射止めてないのか。やっぱりリアルはそう上手くはいかないみたいだな。ってことでお前もどうだ?これを機に二次元来ないか?」


雅紀は超が何個も付くほどのオタクで事ある毎に俺に二次元を勧めてくる。別にアニメなどは嫌いではないがこうも勧められると流石にしつこく感じてしまう。


「嫌だ。でも失恋したら考えなくもない」


 まぁそんなの絶対に起こらんのだがな。俺たちは両想い。俺が告白すればきっと付き合えるはずだ。

 雅紀は二次元を否定され少し不貞腐れたがすぐにスマホの画面を見せて再度俺を勧誘してくる。


「見てくれよ。この子俺の嫁!可愛いだろ?なっ!」

「あー可愛い可愛い。そんな子と結婚できるなんて雅紀は幸せだな」

「へへっそうだろ〜?お前も一緒にやろうぜ?まじでリアルと比べ物になんねぇからよ」

「だからぁ……俺は篠崎さんが好きなんだよ。二次元の良さもお前が勧めたがるのも分かるけど俺は篠崎さんが好きなの…分かった?」


あまりにしつこい雅紀に俺は少し強めの口調で返す。


「お、おう。無理強いしてすまん。ちょっと暴走しちましった……」


 それ以降雅紀は二次元を勧めてくることはせず話をするだけして去っていった。


 再び一人になった俺は一限の準備をして眠りについた。






「聞いてくれ蒼太。さっき新しい嫁ができた」

「最低だなお前。この前俺は1人しか愛さないとか言ってた奴のセリフじゃねぇぞ」


 昼休みの初っ端から繰り出された最低発言につい雅紀をゴミを見る目で見てしまう。


「違うんだよ〜。だって……ジーヴァちゃんの妹だぞ!姉妹丼だぞ姉妹丼。これを叶えるために幾つ諭吉が吹っ飛んだことやら…」

「アホかお前」


指を折って消えてった諭吉の枚数を数える雅紀。まぁこいつの事だからバイトして得た自分の金で課金してるんだろうけども。

 ジーヴァというのは今朝雅紀が見せてきたキャラクターのことだ。青髪巨乳のキャラクターで雅紀曰く、母性は全キャラの中で一番、公式が行った甘えたくなるキャラランキング堂々の一位という凄まじく人気の高いキャラであるらしい。


 そして雅紀のやっているゲームは重婚が可能だと言っていた。そこも流石二次元だな。結婚しても費用がかからないからいくらでも結婚できる。凄い人だとゲームのキャラ全員と結婚してる人もいるらしい。


「2人とも幸せだし良いんだよ。ジーヴァちゃんの母性とナーヴァちゃんの妹属性……く〜!良いね!」

「そうか。お前が良いなら良いと思うぞ」


 まじでこう言う発言がなけりゃモテると思うんだけどなぁ……まっ、人の趣味にとやかく言う必要もねぇか。


 雅紀と他愛もない話をして昼休みを過ごし、残りの授業も全て受け終わる。

 篠崎さんは今日の放課後も残るのかな?一応置いていこうか。


 コートを置いて学校を出る。今日は覗いたりしない。見つかって嫌われるリスクもあるし何より可愛すぎて襲いたくなる。そんなことすれば大問題だからな。篠崎さんにはゆっくりと楽しんでもらおう。


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