第15話 若女将は超覚醒?
さて、俺が渡したオイルの実だが……。
はたして若女将は大喜びであった。
若女将だけでなく、マインたちも大いに喜んで俺を褒めてくれた。
どうやらこの世界でオイルは非常に希少で、それは食材として身体への効果が高く、非常に高価なものである、とのことだった。
まあ、たしかにひとつの実の大きさが半端ないし重い……しかも外皮が非常に頑丈で、かなり高い水圧をかけないと割れなかった。
実の運搬やオイルの抽出などのコスト考えても、この世界では高価格にならざるをえないんだろう。
さらに『甘い』オイルは初めてだという……。
俺の本(ブック)には、この甘味オイルの事は載ってなかった。
それは希少性の高いオイルの中でも、さらに新種の部類になるのかもしれないな……。
俺はこの甘味オイルの有用性にちょっと嬉しくなり、いろいろ閃いてほくそ笑む。
そして、オイルをこくこくと飲んでいる3人を見て俺は心の中で嗤う。
『……ほう?……お前たちはコレが「飲む」だけのものだと思っているのか?』
『それでは、今宵思い知らせてやろう……』
などと俺は、マインとリーファに労いの『オイルマッサージ』をしてあげようと企んでいたのだが……先ほどの戦闘でかなり疲れたのだろう、マインとリーファはお風呂のあとあっさりと眠ってしまった。
……二人の寝息が規則正しく聞こえる。
俺はそんな2人に挟まれながら、今日起こった出来事を頭の中で整理していた。
まず1つ目は、氷の精霊術……マインの家にあった精霊術図鑑の情報には、精霊術の融合については記載されていなかった。
これはどうやら新しい可能性のようだ……。
異なる属性の精霊力を、パズルのピースを組み合わせるように融合する。
……これは精霊の数が増えても混ざりあうのだろうか?
今できたのは2つのピースの組み合わせ……『2P精霊術』とでも名付けておこう。
続いて2つ目、魔法術のこと……おそらくザメ弟が使ったのは中級以上の光魔法術だろう……『イリュジオン』とか言ってたな。
偽装?幻影?そういった魔法術だろうか?
中央都市ミドルーンには、魔法術協会本部や大きな世界図書館もあるらしい。
ドワーフおやじが言ってたな……いろいろ調べてみたい。
最後に3つ目、移動についてだ。
中央都市ミドルーンは、まだここからでも数か月はかかるらしい……今のところ世界の精霊力はまだ保ちそうだが移動力を上げる手段は持っておきたい。
……カギは風精霊の使い方だな。
……などと頭の中でいろいろ考え事をしていた俺が……そろそろ眠りにつこうかとしていると。
……ん?
……どこからか音が聞こえてくる……。
『ズルッ……ズルッ……』
な、なんだこの音?
音的に、まるでジャパニーズホラーに出てくるような怖い音が近づいてくる!
……怖い……普通に怖いぞこれ。
『くーるー、きっとくるー』と俺の頭に流れるメロディ……。
一瞬、日本人的性(さが)で固まっていた俺だが、気合をいれて身体を起こす。
身体を起こした俺が見たものは、ベッドの足元を掴む青白い腕と長い髪の頭部だった!
『わぁぁぁぁぁ!!!!!』
声も出ずに固まっていると、それは俺の足に沿って這い上がり……俺の胸に飛び込んできた!
「えへへ、アーツ様ぁ、今日はありがとうございました♡」
……わ、わ、わ、若女将かい!……心臓とまるかと思ったぞ。
「ど、どうしたんだ!?」
俺は小声で聞いた……まだちょっと怖い。
「いえいえ、今日のお礼をと思いまして……お二人は寝ていらっしゃるようですし……」
若女将はそう言うと、俺の胸板に青白く綺麗な指を這わせながら迫ってきた。
「……気持ちは嬉しいけど……お前は蛇だろ?」
恐怖が過ぎ去ったせいか妙に興奮してきた俺は、青白く湿るたわわな胸を俺の胸板に密着させる若女将から目が離せなかった。
そこで俺は気づく……あ、これ『吊り橋効果』だ。
若女将も今日あった恐怖から解放されて興奮してるのだろう。
「今日のアーツ様を思い出したら我慢できなくなりまして……悪いようにはしませんから私に身をまかせてくださいね♡」
と、いかにも悪そうなセリフを囁きながら若女将はキスしてきた。
『!!!?』
舌が長い!動きがエロい!しかも!なにこれ!?
口を開き興奮した若女将の舌は、だらんと垂れとても長く、そして何と二股に分かれていた。
……だからあの感覚か。
俺は息も絶え絶えに若女将を見つめた……たぶん俺なみだ目だったと思う……。
若女将はそんな俺の気持ちをエスカレートさせるように、その長い舌を湿らせながら、俺の胸板を……続いて俺の腹筋を……優しく、そして大胆に、丹念に……。
『……ズルリ』
「ちょっ!?ちょっと!?」
……ズボンが降ろされた感覚に俺は我に返り焦る!
「私はナーガで下半身は蛇ですので、ご安心ください」
……いったい何を安心しろというのか……。
……このままではマズい!
我に返った俺は、そんな若女将を胸に抱きかかえ耳元で言い放つ。
「そこまでだ若女将……今度は俺に付き合ってもらうぞ!」
「きゃっ♡」
そんな若女将を胸に抱きかかえたまま、部屋を出て若女将の自室に向かうのであった。
◆◇◆◇◆
……夜が明けて。
……本(ブック)の知識(健全なのも、そうでないのも)をフル活用しオイルマッサージで若女将を骨抜きにした俺であった。
……勝った……さだ子に勝った……と不毛な勝利に浸る俺であったが、若女将の協力でオイルマッサージの効果が充分に検証できた。
飲むことで身体能力を回復・向上させるオイルだったが……マッサージでは更に効果が上がった!
しかもそれだけでなく、美肌・美髪などの外観の向上効果が半端なかったのである!……たぶん耐久力もあがってるぞこれ。
……これは!イける!!!
俺はこれからの先を考え、ニヤリと目を光らせるのであった……。
◆◇◆◇◆
朝食をとるため、俺たちは宿の食堂に来ていた。
……艶っつやでキラキラな魅力を振りまきながら朝食を運んでくる若女将に、リーファは驚く。
「昨日の襲撃で、あんなに疲れたのに……若女将の輝きが半端ないわね」
と不思議がるリーファは俺を見てさらに驚く!
「ア、アーツ!?……あ、あなたも眩しい!何その瑞々しい胸板!そして何その爽やかな笑顔!」
と、真っ赤にして浴衣から覗く俺の胸板を凝視するリーファ。
「アーツ様はいつも格好いいですよ♡素敵です♡」
マインはさっきからずーっと俺の胸板を見続けている……。
「……コホン」
食事もあらかた済ませたところで、俺は飲んでいたお茶を机に置いて言う。
「さてと……これからのことなんだが……」
俺は、昨日からの出来事……そして壊した宿の修理代や、これから向かうミドルーンと移動のこと、精霊力のことなんかを2人に話した。
「すまない、そういうことで2人は今日もこの宿で待機だ。昨日の襲撃の影響が出ていないか街の様子も見ておきたいし、これからの移動手段の目途も立てておきたい」
俺は2人にそう言って締めくくると、片づけをしている若女将を呼びつけ、もう1泊する事を伝えた。
「はーい、ご連泊ありがとうございます!マイン様、リーファ様、今日は宿でゆっくりしてください!……また旅のお話など聞かせてくださいね」
若女将は、嬉しそうに艶っつやの笑顔で答えた。
◆◇◆◇◆
……出かける準備を終えた俺は宿の上空……かなりの高度に浮いている。
「とりあえず、まずは昨日の甘味オイルの実を収穫だな……あとは飛びながら考えよう」
と、飛行速度の検証などしながら俺は森の奥へと向かう。
そして俺はまた森の奥深く……上空から昨夜の場所に降り立つのだった。
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