第262話:必滅のラストナイト②

「アースブレイド!」

「賢者の石!」

『必滅――ほほう! 本物の賢者の石か!』


 必滅と口にしたラストナイトだが、土の刃であるアースブレイドは消えたものの賢者の石は変わらず近づいていく。


『ふんっ!』


 腕を振り上げ賢者の石を弾き飛ばすと、ニヤリと笑い間合いを詰めてくる。

 その相手はヴォルフではなく、カナタだ。


『まずは面倒な賢者の石の持ち主を潰させてもらう!』

「させん!」


 鋭く振り抜かれた爪をアースヴォルグが受け止めるが、ヴォルフの足が大きく地面にめり込んでいく。

 直後には賢者の石が背後から襲い掛かるが、振り返ることなく横に飛び退いて回避する。

 このまま畳み掛けようと前に出たヴォルフだったが、歴戦の戦闘感なのか目を大きく見開くと同時に大きく飛び退いた。


 ――ドゴンッ!


 直後、先ほどまでヴォルフが立っていた地面が大きく陥没し、衝撃波が周囲へと広がっていく。

 背筋がゾッとする感覚を覚えながら、直後にはアースウォールが大量に顕現される。


「失礼します!」

「えっ? どわあっ!?」


 ヴォルフの言葉に返事をする暇もなく、カナタは彼に抱えられてさらに後方へ下がる。


『必滅』


 顕現したアースウォールが一瞬にして粉々となり舞い上がる。


「ウィンド!」


 その瞬間、土煙が渦を巻きラストナイトを覆いつくす。


『はぁ。小細工だな』


 ため息交じりにそう口にしたラストナイトが腕を軽く横薙ぐと、渦巻く風以上の風圧を発生させて土煙を吹き飛ばしてしまう。


『背後を取ったつもりか?』

「ぬおっ!?」


 そのまま回し蹴りが放たれるとヴォルフの左肩を掠る。

 ただ掠っただけなのだが、左肩が大きく仰け反り体勢が崩れてしまう。


『終わりだ』


 ラストナイトが飛び上がり両手の爪がヴォルフへと襲い掛かる。


 ――ガキンッ!


 そうはさせまいと賢者の石が大きく広がりヴォルフを包み込むと、ラストナイトの攻撃を完全に防いでしまう。


『……これで貴様を守るものはなくなったぞ!』

「くっ!」


 完全に孤立してしまったカナタを狙い、ラストナイトが一気に駆け出す。

 お互いの距離は一〇メートル近く離れていたが、ラストナイトからすれば一歩の距離だ。

 誰もカナタを守る人はおらず、賢者の石とも距離がある。

 死んだ――普通ならそう思うだろう。


「溶けてなくなれよな!」


 だが、カナタには秘策があった。

 煉獄のディブロとの戦闘で魔法鞄へ大量に取り込んだマグマを、ラストナイトめがけて大量に放出した。


『な、なんだこれは!?』


 ラストナイトから驚きの声が漏れたが、すぐに態勢を整える。


『必滅! ……ちっ、必滅、必滅、必滅! 何故だ、どれだけの量を確保しているのだ!』


 絶え間なく流れ込んでいくマグマにラストナイトが舌打ちをする。

 直後、ラストナイトに影が下りた。


「一撃必殺――エンドブレイク!」


 大きく広がった賢者の石に乗り飛来したヴォルフがアースヴォルグを上段に構える。

 渾身の一撃が確実に当てられるタイミングで放たれた。


「これで終わりだ、ラストナイト!」


 カナタのマグマとヴォルフのエンドブレイク。

 二つの攻撃が一気にラストナイトへ襲い掛かった。

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