第261話:必滅のラストナイト①
「アーススピア!」
『必滅』
放たれたアーススピアは一直線にラストナイトへ向かうものの、一メートルほど手前で全てが粉々に崩れてしまう。
それでも魔法を放ち続けていたヴォルフは、次に別の魔法を展開する。
「アースブレイク!」
魔法が崩れる間合い外から仕掛けようとたった一匹を相手に広域殲滅魔法を放つ。
『ほほう? 考えたではないか。しかし――必滅』
ラストナイトが『必滅』と呟くたび、魔法が一定の範囲内で崩れ、消滅してしまう。
アースブレイクもしっかりと発動しているのだが、ラストナイトに届くことはなく、ただ周囲の地面をひっくり返しただけだった。
『……ふむ、これが狙いだったか?』
そう呟いたラストナイトはニヤリと笑う。
地面がひっくり返されたことで砂煙が舞い上がり、さらに視線を切る障害物が多く出来上がっている。
すでに真正面に立っていたヴォルフの姿を見ることができなくなっていたラストナイトだが――おもむろに腕を上に振り上げた。
――ガキンッ!
『むっ!』
「ぬおおおおおおおおっ!」
『むぅ……ぅおあっ!』
ラストナイトが力を込めると、ヴォルフは大きくはじき返されてしまう。
追撃を警戒したヴォルフだったがそれはなく、ラストナイトははじき返した腕を見下ろしながら逆の手で軽くさする。
『……なかなかやるではないか!』
直後、獰猛な笑みを浮かべて殺気が全身から噴き出してくる。
ラストナイトの殺気をヴォルフは真正面から受けたものの、彼は目を見開き大きく息を吐き出した。
(アースヴォルグがなければ、今の一撃で剣を砕かれ殺されていただろうな)
冷や汗を流しながらアースヴォルグに感謝しつつ、意識をラストナイトへ集中させていく。
『よし、決めたぞ。五割でやろうではないか』
「……なんだと?」
『一撃で死ぬなよ?』
「――ぐおっ!?」
地面を粉砕して肉薄してきたラストナイトの鋭い爪をアースヴォルグで受け止めたヴォルフ。
直後、あまりの重さにヴォルフが立つ地面が陥没し、彼の全身から汗が吹き出してしまう。
「ぐぬぬ、ぬおおおおおおおおっ!」
『ほほう! これでもまだ耐えるか! よい、よいぞ!』
なんとか耐えているヴォルフだが、現時点でギリギリの状態でもあった。
「――賢者の石!」
『ほほう? 邪魔をするか、人間!』
「カナタ殿!」
ヴォルフが限界を迎えようとした直後、カナタが賢者の石を飛ばして援護に入る。
即座に左腕で迎撃をしたラストナイトだったが、直撃した瞬間にぐらりと視界が歪んだ。
『ぬ? これは、賢者の石だと!?』
「せいやああああっ!」
『いいだろう! 二人まとめて相手をしてやろうではないか!』
「ヴォルフ様、やりましょう!」
「おう!」
煉獄のディブロとの戦いでも感じたことだが、カナタは賢者の石が魔族に対して弱点になるのではないかと考えており、それが的中した格好だ。
『この場で強者と賢者の石の持ち主を殺せるとは、魔王様に良い報告ができそうだぞ!』
「こっちこそ、五大魔将の撃破を手土産にしてやる!」
「負けるわけにはいかんぞ、必滅のラストナイトよ!」
ここにカナタとヴォルフ、そして必滅のラストナイトとの第二ラウンドが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます