第251話:アルフォンスの戦い

 北の戦場の最前線となったアルフォンスが立つ場所。

 周囲には他に人影はなく、あるのは凍りつき粉々に砕けた魔獣の死骸だけ。

 彼が手に持つ一等級の武具は、ホワイトダンスと名付けられた。


「舞い踊れ、氷の礫よ」


 アルフォンスの作り出したアイスワールドは本来、範囲内の魔獣を凍りつかせて一気に倒す広域殲滅魔法に分類されている。

 今回のアイスワールドも同様の効果をもたらしていたのだが、アルフォンスはさらなる改良を加えて今回の魔法を発動させていた。

 氷の礫が氷の世界の中を飛び回り、凍りつかせた魔獣を砕いていく。

 さらに凍りつかなかった魔獣の肉体を傷つけ、貫き、体内から凍りつかせていく。

 効果範囲も最初の頃に比べると倍近く広がっており、アルフォンスはたった一人でスタンピードを抑え込めるだけの実力をつけるまでに至っていた。


「……この辺りにはもう魔獣はいませんか」


 魔獣の数を減らすのが目的のアルフォンスは、ここで戻るか、それとも先へ行きさらに間引くかを考える。


「……先に行きますか」


 少しでも後続の軍の負担を軽くするため、そして自らの状態を冷静に判断して先へ進むことを選択する。


(……それにしても、ホワイトダンスは本当にすごいですね。少量の魔力で大きな魔法を放つことができる)


 加えてアルフォンスは自らの変化にも気づいていた。


(体内に内包されている魔力が大幅に上昇している。カナタ様の武具がなければさらに魔力に振り回されていたでしょうが、今の魔力量でも全く苦にすることなく制御できている)


 ホワイトダンスの柄をギュッと握りしめ、アルフォンスは視線を氷の世界が広がる前方へと向ける。


「……ん? あれは、なんだ?」


 先ほどまで魔獣の気配はどこにもなかった。

 それにもかかわらず前方には突如として何かの気配が現れた。


 ――魔獣ではない。


 アルフォンスは直感的に気づくことができた。

 なぜなら彼は以前に前方の気配と似た存在と相対していたからだ。


「……それも、二匹ですか」


 アルフォンスは冷や汗を流しながら呟いた。


『あら~? もしかしてあなたが、これをやった人かしら~?』

『マジか! いいねぇ、俺様とやろうぜ!』


 煉獄のディブロと同じ気配を持つ二人の魔族。

 小さく息を吐き出しながらホワイトダンスを構えたアルフォンスは、最大級の警戒をしながら口を開いた。


「あなた方は、五大魔将と呼ばれる魔族ですか?」

『私たちのことを知っているのね~? うふふ、興味深いわ~』

『いいなあ、お前! 俺様とやろうぜ!』

『あなたはそれしか言えないわけ~?』

『強い奴とやるのが好きなんだ! いいだろう、やろうぜ! ってか――俺から言ってやる!』


 腰まで伸びた金髪を風に揺らしている女性の姿をした魔族が宙に浮いたまま艶めかしい笑みを浮かべている中、筋骨隆々で赤髪の魔族が一直線に突っ込んできた。


「アイスウォール!」

『いいねえ! だが――俺様には効かないぜええええ!』

「こいつ、砕きながら突っ込んでくるだと!?」

『俺様は金剛のフラ! どんな攻撃も俺には効かねえし、邪魔なものがあれば打ち砕くだけだぜええええ!』

『フラは筋肉バカだけど、強いわよ~?』

「ならばまずはお前から倒してやろう、フラ!」

『お前、いいなあ! いいぜ、やろうぜ!』


 アイスウォールを砕いて目の前まで突っ込んできたフラめがけて、アルフォンスはホワイトダンスを鋭く振り抜く。

 刃と拳がぶつかり合う中、アルフォンスは予想外の事態に目を見開いた。


「斬れないだと!?」

『砕けねえだと!?』


 しかし、驚愕したのはアルフォンスだけではなく、フラも同じだった。

 お互いに絶対の信頼を置く武具と拳が跳ね返されたことに驚愕し、そして相手の実力を寸分の狂いなく把握した。


『……くくくく、いいねえ、あんた! 絶対にぶっ殺してやるぜ!』

「それはこちらのセリフだ。金剛のフラ、そしてお前も私が倒すぞ」

『あら~? 私はただ見ているだけなんだけどね~』


 豪快な笑みを浮かべるフラと、妖艶な微笑みで見下ろす魔族の女性。

 二匹の魔族を――五大魔将を相手に、アルフォンスの戦いが始まった。



※※※※

【宣伝マラソン4日目!】

宣伝マラソンも気づけば半分を過ぎたんですねぇ。

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9784040747392

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https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16817330648625607945


私の地元では、いつも通りまだ書店に並んでおりません。。早く見たい!

※※※※

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