第248話:援軍到着

「――ファイアランス!」


 二人の背後から聞き慣れない声が響き渡ると、強烈な熱波を放出しながら巨大なファイアランスがダークフェイスめがけて放たれた。


『ダークバイト!』


 それを見たダークフェイスは防御魔法のダークバイトを発動させると、自らの影が盛り上がりファイアランスを飲み込んでしまう。


「第二射放て!」

「「「「はい!」」」」


 声の主が号令を放つと、最初のファイアランスほどの威力はないが、大量の魔法がダークフェイスへ殺到していく。


「……何が起きているのだ?」

「……ん? スレイグ、体が動くよ!」

「何? ……本当だ」

「お父様! ローズ!」

「「リッコ!!」」


 スレイグとローズが同時に声をあげ振り返ると、そこには白馬から颯爽と降り立ったリッコの姿があった。


「あの魔導士たちはリッコが連れてきてくれたのか!」

「助かったさね!」

「お父様とローズは下がってください。あいつの相手は、私がします」


 そう口にしながら二人の前に出たリッコは、腰に下げた新しい愛剣の柄を握りしめた。


「待て、リッコ。奴は強い」

「自分のことを五大魔将とか呼んでいたよ」

「五大魔将……ここにも魔族が現れたんですね」

「……ま、魔族だと?」

『――ほほう? 私のことを知っている人間がいましたか』


 魔法の弾幕により砂煙が舞い上がっていた中から声が聞こえてきた。

 戦場の最前線であるにもかかわらず、その声はどこか弾んでいるようにリッコには聞こえた。


「……あなたを倒してここを守るわよ、五大魔将」

『漆黒のダークフェイスですよ、お嬢さん?』

「関係ないわ。魔族は倒す、ただそれだけよ」

『あなたにそれができるとでも?』

「やってみれば分かるわ」


 リッコが宣言した直後、砂煙が一気に吹き飛びダークフェイスが突っ込んできた。

 そこへ居合の構えを取っていたリッコの一閃が放たれると、今まで回避行動をとってこなかったダークフェイスが初めて動きを止めて大きく飛び退いた。


「……惜しかったか」

『……その剣、彼のものよりも業物ですねぇ』


 左腕についた傷から流れる血を舐めながらダークフェイスがそう口にする。


「愛する人が作ってくれた最高の一振りよ。あなたなんて一瞬で切り刻んであげるわ」

『愛する人ですか。……ならば、そんなあなたを肉塊にしてしまえば、その方はどのような顔をするのでしょうねえ! くくくく、楽しみで仕方ありませんよ!』

「そんなこと、絶対にさせないわ!」


 ダークフェイスを睨みながら完全に抜き放たれたリッコの愛剣。

 アクアコネクトを彷彿とさせる青を基調とした剣身に、緑の筋が吹き荒れる風のように流れている。

 細身ではあるが非常に硬く、切れ味はダークフェイスの皮膚を斬り裂いたことで証明されていた。


『言っておきますが、私があなた方と戦っているのは単に優位がこちらにあるからなのですよ? 魔獣の群れをそちらへ差し向けることも可能なのです。それを知ってもなお、私に勝てるとお思いですか?』

「あら? 私に勝てないからそんなことを言っちゃってるのかしら?」

『……あなた、冗談もほどほどにしておくんですね』

「本当のことじゃない。負けそうになったから脅しを掛けてきたんでしょう?」

『……いいでしょう。あなたは私がこの手でぐちゃぐちゃの肉塊に変えて差し上げましょう!』


 両手を広げたダークフェイスが再び分身を顕現させていく。

 その数が今回も二つ、四つ、八つ、一六と倍々に増えていくが、今のリッコには全く関係なかった。


「あなたの分身が出揃うのを待つ必要なんて、ないわよね?」


 一つ、また一つと増えていく端から、リッコは高速機動で接近して斬り捨てていく。

 あまりの速さに分身の顕現が間に合わず、ダークフェイスは歯噛みしながら別の魔法を発動させた。


「ダークバイト!」


 リタのファイアランスを飲み込んだダークバイトがリッコへと襲い掛かる。

 しかし、リッコが愛剣を振り抜くと、魔法で作られたはずのダークバイトを両断し、霧のように霧散していく。


『まさか! 私の魔法を、斬ったですって!?』

「私の新しい愛剣――アクアウィンドを甘く見ないでよね!」


 切っ先をダークフェイスに向けながら、リッコが攻勢に転じた。




※※※※

【宣伝マラソン1日目!】

書籍化記念!渡琉兎恒例の宣伝マラソンが始まります!

本日11/02 ~ 11/08 の一週間は毎日更新しますので、煩わしいかもしれませんがお付き合いいただけますと嬉しいです!

というわけで、『錬金鍛冶師』1巻の発売が近づいてまいりました!詳細は下記の通りです!


▼タイトル

『錬金鍛冶師の生産無双 生産&複製で辺境から成り上がろうと思います』

▼発売日

2022/11/04(金)

▼イラスト

くろでこ先生

▼ISBN

9784040747392

▼書影添付の近況ノートURL

https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16817330648625607945


くろでこ先生にて、かっこいい!かわいい!イラストを描いていただいております!

大ボリュームの書き下ろしに新エピソードも加わり、とあるキャラに至っては『web版と違うぞ!?』となるかと思います!

皆様、ぜひぜひよろしくお願いいたします!

※※※※

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