第242話:力の証明

「来たか、ヴォルフよ」

「はっ! ヴォルフ・ガードナー、ただいま参上いたしました、陛下」


 ライアンの言葉にヴォルフが答えると、その視線は再びカナタへ向けられる。

 その視線は敵意あるものではないにしても、先ほどの言葉が本当なのかという疑いの眼差しのようにカナタには見えた。


「それで、カナタ殿。先ほどの話は本当なのですかな?」

「……はい、可能です」

「そうか。であるならば、まずはこれを見ていただけますかな?」


 そう口にしたヴォルフは早速抜き身の短剣をカナタへ手渡した。


「これは全隊員に渡している短剣になります。これでも五等級のものを専属の鍛冶師に依頼して納品してもらっております」

「五等級……確かに、その通りですね。他の短剣を見せてもらってもいいですか?」

「えぇ、もちろんです」


 陛下の前ということを忘れて、カナタは鍛冶師の顔となり持ち込まれた作品の見分を始めた。

 すると、短剣だけではなく他の武具に関しても五等級を中心に納品されているということがわかった。


(素材は銀鉄に精錬鉄、ここは予想通りだな)


 二つの素材を使って五等級以上を作ることは可能だが、それをどこで止めるべきなのか、カナタは判断に迷ってしまう。

 一等級を作り出すことはシルバーワンで証明されているが、等級の高い作品の複製は魔力の消費が大きくなる。

 大量に作るなら四等級で止めるべきなのだが、騎士団に充実した武具を支給するなら三等級に上げることも考えるべきだろう。


「……三等級で複製を行います」

「……三等級ですと? それは、誠でしょうか?」


 ヴォルフは信じられないといった表情で呟いたが、カナタは力強く頷いた。

 魔力ギリギリになるかもしれない。もしかするとリッコたちの武具を作った時のように倒れてしまうかもしれない。

 だが、倒れることを気にして等級を下げたことで、多くの命が危険に晒されるかもしれないと考えれば、安全圏にいる自分が無理をするべきだと判断した。


「まずは一本、三等級を作ります。それを見て他の騎士団に支給してもいいかを、ヴォルフ様に判断してもらってもよろしいでしょうか?」

「……かしこまりました」


 ヴォルフの答えを聞いたカナタは一度深呼吸を挟むと、魔法袋に入れていた一般的な銀鉄を取り出した。

 何が始まるのかとライアン以外の面々がカナタへ注目する中、ついに錬金鍛冶が発動された。


「うおっ! な、なんだ、これは!!」


 声をあげたのは一番近くで見ていたヴォルフだった。

 強烈な光を放つ銀鉄がひとりでに動き出し、持ち込まれた支給品の短剣と同じ形に変化していく。

 他の面々は口を開けたまま固まってしまい、声をあげることすらできていない。

 徐々に光が薄れていき、最終的には支給品の短剣とパッと見では区別がつかない新たな短剣がカナタの手の中で生まれていた。


「……な、なんだったのだ、今のは?」

「今のが俺の鍛冶……いや、俺の力の錬金鍛冶です」

「錬金、鍛冶?」

「我も最初に見た時は驚いたが、これがカナタの力なのだ」

「ヴォルフ様、こちらを確認していただいてもよろしいでしょうか?」


 驚愕しているヴォルフに対して、カナタは錬金鍛冶で作り出した短剣を差し出す。

 驚きが抜けていないヴォルフだったが、差し出された短剣を受け取ると、手に取った瞬間に五等級の短剣との違いに気がついた。

 ゴクリと唾を飲み、おもむろに最初に見せた五等級の短剣も逆の手で取り、その場で短剣同士をぶつけてみた。


 ――キンッ!


「……斬れた、だと?」


 カナタの作った短剣が、五等級の短剣の剣身を真っ二つに斬り落としてしまった。


「どうでしょうか?」

「……これを見てしまったら、何も言えませんな。本当にこちらを複製でしたか? できるのですか?」


 目の前で錬金鍛冶を見たヴォルフだが、三等級の作品を大量に複製できるのかどうかを判断できないでいる。


「大丈夫ですよ。まずは十本、複製しましょうか」


 そう口にしたカナタがあっという間に三等級の複製を作り出してしまうと、さすがのヴォルフも声を出すことができなかった。



※※※※

 ドラゴンノベルス様のサイトにて、書影が出ました!

 書影画像を添付した近況ノートを更新しましたので、ぜひご覧になってください!

 カナタとリッコが格好よく、かわいく描かれておりますよ!


▼近況ノートURL

https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16817330648625607945


 皆さま、何卒よろしくお願いいたします!

※※※※

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